2004 年 13 巻 1 号 p. 1-17
本論では,消費者の選好が環境の変化に影響を受け,とくに企業の技術革新や消費者間の情報交換により選好における選択ルールが進化していく過程をエージェントベースアプローチにより分析する枠組みを提示する。本論の枠組みの特色は,消費者をエージェントとして扱うことで,その異質性をモデル上に明示的に表現し,消費者が置かれている環境や社会の特質に合わせて選好の進化過程を分析できることである。
近年の実証研究等により,環境の変化に対応して消費者の選好が変化あるいは進化することが明らかになりつつある。しかし,消費者の選択ルールの動的な進化過程のメカニズムの解明までに至っていない。本論で提示する分析枠組みはそのような選択ルールの進化過程のメカニズムへの論理的説明のための基礎を提供する。
本論では,各消費者がそのタイプに応じて選択ルールを内部モデルとして持ち,とくに,補償型の選択ルールから非補償型の選択ルールを加えた二段階選択ルールへと進化する過程に焦点を当てる。この進化過程を分析するために,本論のシミュレーションには逆シミュレーションの手法から派生した方法を用い,消費者の内部モデル,成功尺度を個別の問題ごとに特定し,仮想的社会を構成する。本論では提示した分析枠組みが有効であるかをいくつかの仮想的社会を設定してシミュレーションにより検証した。