2011 年 20 巻 1 号 p. 23-38
未格付け企業に対して公開されている財務指標から格付けを高精度で予測できるツールの構築を目的として,サポートベクターマシン(SVM)を用いて格付け済みの全企業の格付けと財務指標のデータを解析する大規模実験を試みた.「会社四季報」に掲載されている格付け済みの企業1,213社の11年間(2000~2011年)の格付けデータ18,119レコードについて,13~15種の財務指標から発生させた91~120種の中から抽出した有効な財務指標・比率を用いて,29業種ごとに解析した.ソフトウェアLIBSVMを用いたモデルをCross-validationにより最適化した後,近年(2008~2011年)の財務データを入力して予測性能を評価した.その結果,格付け済みの企業の格付けが86%の正解率で予測できることを実証した.この精度が格付け予測ツールとして十分な性能であること,および入力データが13~15種と少数であることから,本予測モデルは企業を評価する際の一つの支援ツールとして有効に機能するものと考えられる.したがって,格付け会社が不透明なプロセスで行っている格付けが,公開されている財務情報のみからほぼ再現できることを示すことができた.