2013 年 21 巻 4 号 p. 279-294
銀行の不良債権処理コスト(以下信用コストと呼ぶ)を推定する先行研究では,説明変数も推定モデル構築手法も,企業財務分析に関するそれ以前の先行研究で用いられた,一般的なものが使われている.本研究では,説明変数に関しては,これら一般的な財務指標に加えて,銀行経営の本質を表す数多くの属性を定量化し,そのなかから重回帰分析およびCARTにより,最も重要なものを定量的に選択した.また信用コストの推定モデルに関しては,重回帰分析,ニューラル・ネットワーク,サポート・ベクター・マシーンの精度を評価した.結果として,先行研究で用いられた変数より,一与信先あたりの貸出金額や本店所在地における預金増加率などが,信用コストにとって重要であることが示された.さらに信用コストとその説明変数の間には,非線形・非連続の関係があるため,変数選択も信用コストの推定モデル構築も,ノンパラメトリック手法を用いるほうが,分布に基づく手法より精度が高いことが示された.