主催: 日本地球化学会年会要旨集
会議名: 2021年度日本地球化学会第68回年会講演要旨集
回次: 68
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/15
p. 31-
海水中の溶存鉄の大部分は有機錯体鉄として存在すると考えられているが、貧酸素水塊などの還元的環境では溶解度の高いFe(II)として存在することが指摘されている。本研究では、貧酸素水塊が発達する夏季の有明海湾奥部においてFe(II)の経時変化を調べ、潮汐がもたらす還元環境の変化が鉄の化学形態へ与える影響を調査した。2020年8月4日に日の出前から日没後まで1時間ごとにFe(II)と栄養塩濃度を測定した。観測の結果、水柱は成層化しており、溶存酸素濃度は中層以深では低濃度となっていた。Fe(II)濃度は、表層や海底直上より中層で高くなる傾向が見られ、高濃度のFe(II)は満潮の1時間後の中層で観察された。硝酸塩+亜硝酸塩、リン酸塩は引き潮時の中層で高くなる傾向があり、干潮時の表層ではいずれも低濃度であった。これらの結果、貧酸素水塊が発達する夏季の有明海湾奥部では、潮汐が鉄の化学形態や栄養塩濃度に影響を及ぼしていたことがわかった。