人間の意思決定プロセスをモデル化する手法の一つにAHP(階層分析法)と呼ばれる手法がある.これは1970年代後半にピッツバーク大学のSaaty教授によって提案された手法であり,今日,社会におけるさまざまな意思決定プロセスをモデル化する際に活用されている.ところが,先行研究を概観すると,多くの研究が個人の意思決定プロセスを対象としており,集団における意思決定にAHPを利用した研究はあまり行われていないのが現状である.本研究では集団における意思決定プロセスのモデル化にAHPを適用した先行研究事例を概観するとともに,先行研究において研究されてきたモデルの持つ課題について考察する.併せて,疑似乱数を用いて集団AHPにおける一対比較行列の評価値を推定するアルゴリズムを提案したうえでモデルの改善を試みる.さらに,提案モデルを東日本大震災からの復興促進を目的として開発される復興商品のデザイン開発に適用することにより,本研究における提案モデルが集団における意思決定プロセスをモデル化するうえで有効であることを実証する.