論文ID: 37.3_02
胸骨圧迫に合併する肝損傷は, 体外循環装置使用下では治療に難渋する. 心肺停止に対するV-A ECMO (Veno-Arterial Extracorporeal Membrane Oxygenation) 導入後に肝損傷が遅発性に顕在化し, 手術療法で治癒した2例を経験したため報告する. 1例は, 冠動脈形成術後のCT検査で造影剤漏出像を伴う肝損傷が顕在化し, 腹部コンパートメント症候群に陥り緊急開腹手術を施行した. 1例は, V-A ECMO導入後のCT検査で血性腹水が増加し緊急開腹手術を施行した. 2例とも生存転帰を得た. V-A ECMOでは抗凝固薬の使用が必須で易出血性となり, また腹腔内出血による循環血液量減少や腹腔内圧上昇によりECMO継続が困難となる. V-A ECMO下でも緊急開腹止血術を施行可能である.