生物教育
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研究論文
サカマキガイの教材化に関する基礎的研究
―標識再捕法による個体数推定実験―
小松原 崇北野 日出男
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1997 年 37 巻 1-2 号 p. 17-23

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抄録

個体数推定の実験実習の材料として,サカマキガイPhysa acuta(Draparnaud)を使用することの有効性について検討した.

1.実験容器には市販のプラスチック製の半透明な直方体の容器(縦10cm,横15cm,深さ7cm)を用い,水深を5cmとした.容器の底面と側面は,無作為に区画を決めるため,あらかじめ16区画(1区画5cm四方)に区切った.実験に用いる貝には,個体識別のため標識を付けた.

2.真の個体数(既知数)を10,20,30,40,50,60の6通りにした場合,真の個体数が多くなるほど推定値が過小評価になる傾向を示した.

3.標識個体の捕獲率と未標識個体の捕獲率が等しいという推定式の条件は,真の個体数が多くなるほど満たされる傾向にあった.真の個体数が10および20のとき,この条件は大きくばらついたため,実験に適していないと思われる.

4.なるべく少ない抽出区画数で精度の高い推定値を得ることが望ましいが,今回の実験系で推定精度を高くするためには,あらかじめ入れておく個体数を30,40,50個体とし,それぞれの抽出区画数を8,5,4とする条件設定が有効である.

5.一定数の個体を捕獲する方法では,生徒の目は一度標識を付けた個体に引きつけられやすくなりがちで,ランダム サンプリングの条件が満たされないことが多いが,抽出区画を設定することにより,その問題を解消することができる.

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© 1997 一般社団法人 日本生物教育学会
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