生物教育
Print ISSN : 0287-119X
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研究論文
  • 深谷 将, 武村 政春
    2019 年 61 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/13
    ジャーナル フリー

    効果的な教材を開発するためには,教材の評価が重要となる.本研究では,進化と系統を結び付けた生物教育の実現に向け,その教材の評価法の確立を目的とし,アンケートの実施と分析を行った.アンケートでは,回答者を教材(共生説と三ドメイン説に関する図)ありと無しのグループに分けて,進化と系統に関する知識を問う選択式の質問と,進化と系統に関する文章の面白い・重要・分からないと思った箇所にそれぞれ下線を引かせる質問に回答させた.選択式の質問から,生物基礎を履修する高校生の結果において,教材を用いると共生説と三ドメイン説の関係に関する質問の正答率が下がるという結果が得られた.また下線の分析から,その生徒達が「原核生物は細菌(バクテリア)と古細菌(アーキア)に大別され,それ以外の生物はすべて真核生物にまとめられる」という文章を分からないと考える傾向が,教材を用いなかった生徒と比べて強いことが分かった.これらの結果から教材を評価すると,この教材には補足の指導を加えるなどの改善が必要であることが示唆された.またこの下線引き評価法を用いて,教材の評価と改善を繰り返し,教材の効果を高められる可能性が示された.

研究報告
  • ―小学校理科の教材として―
    橋本 健一, 澤 友美
    2019 年 61 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/13
    ジャーナル フリー

    小学校3学年理科B生命・地球(1)身の回りの生物の単元では,昆虫の体は頭・胸・腹からできていることについて学習する.手軽に得られ,簡単に観察できる材料として,アブラゼミ(Graptopsaltria nigrofuscata)などのセミの抜け殻を教材とした授業実践を行い,その有効性について検討した.授業に先立つ事前アンケートで,「セミの抜け殻を見たことがあるか」に対しては,東京都渋谷区立笹塚小学校(以下笹小)3年生児童120名(男子55名女子65名)の95%,私立津田学園小学校(以下津小)(三重県桑名市)4年生児童45名(男子21名女子24名)の87%,津小1年児童35名(男子17名女子18名)の94%が「ある」と回答した.また,「セミの抜け殻を拾ったり触ったりしたことがあるか」に対しては,笹小3年児童の71%,津小4年児童の67%,津小1年児童の65%が「ある」と回答した.セミの抜け殻は児童にとって身近な存在であり,比較的多くの児童が興味を持つ存在である思われる.2015年9月4日に笹小3年児童26名(男子13名女子13名)を対象に,アブラゼミの抜け殻を用いて,昆虫の体のつくりを調べる授業実践を,連続した2単位時間の授業として行った.抜け殻は児童1人に1個体配布し,先ず,自由に観察・スケッチした後,図中に頭・胸・腹を境目がわかるように示すよう指示した.次いで,頭は触角や眼のあるところ,胸は翅や肢がついているところなどの観察の視点を与えた上で2回目のスケッチを行わせ,再度,図中に頭・胸・腹を境目がわかるよう示すことを指示した.その結果,視点を与えていない1回目のスケッチでは,頭・胸・腹の区別をほぼ正確に捉えていたと思われる児童は19%であったのに対し,視点を与えた後の2回目のスケッチでは58%に増加した.また,2016年10月12日に,笹小3年児童64名(男子27名女子37名)を対象に,授業時間は1単位時間とし,最初から観察の視点を与えた上でスケッチさせた.その結果,児童の61%が頭・胸・腹の区別をほぼ正確に捉えていた.この結果から,多くの児童がセミの抜け殻の体のつくり,特に,頭・胸・腹の区別を観察により捉えることができ,特に,予め,観察の視点を与えることにより,効果的な授業展開が可能と思われた.セミの抜け殻は終齢幼虫の脱皮殻であるが,セミ類は不完全変態の昆虫であるため,その体のつくりの成虫との差は完全変態の昆虫ほど大きくはなく,昆虫の体のつくりの基本を確認することができる.都市部でも容易に見つかり,均一な材料を多数,簡単に集められ,長期間の保存にも耐えうるので,昆虫の体のつくりを調べる教材の一つとして有効に活用できるものと考えられる.

  • 園山 博
    2019 年 61 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/13
    ジャーナル フリー

    学習指導要領が改訂され,理科の目標において,探究の過程を通して観察,実験などに関する技術を身に付けることや探究の過程を通して探究の方法を習得させ,科学的に探究する力を育成することなど,「探究の過程」を通した学習の重要性が示された.そこで,「探究の過程」とは,教科書においてどのように扱われているのか,また実験等においてどのような探究の過程が見られるかを,現行の「生物基礎」を例に調査した.「探究の過程」については,各教科書によって記載されている事柄に違いが見られた.特に導入においては,生徒の疑問から発する場合やそれまでの学習の経緯に着目するものなどがあった.教科書に記載されている実験等は大きく「探究活動」と「観察・実験」に分かれており,探究の過程を8個の過程に分けると,過程を6個以上記載している「探究活動」は,全体の約85%であった.しかし,すべての過程を網羅している活動は約20%しかなく,また「観察・実験」では課題の探究(追究)の過程に限られたものが多かった.したがって,科学的に探究する力の育成のため,各過程の相互的な結び付きができるように,不足している過程を補う必要がると考えられる.特に,今後教師の知識伝達型授業から,生徒自身が見いだしたりする授業に転換するためには「観察・実験」では,課題の解決に関する過程を充実させる必要があると考えられる.

研究資料
  • 大井 真菜, 水口 智人, 夏厩 悠斗, 小川 唯菜, 三宅 崇
    2019 年 61 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/13
    ジャーナル フリー

    高等学校の生物教育では,具体的な方法や技術に触れながらバイオテクノロジーを学習させることが求められている.しかしながら,バイオテクノロジーを用いた実験は十分に行われておらず,特にPCR法では温度制御の行えるサーマルサイクラーが高価なことが障壁となっている.そこで,本研究ではサーマルサイクラーの代わりに保温性スープジャーを使用して,安価かつ簡便に行えるPCR実験法の開発を行った.その結果,(1)スープジャー内の温度低下の抑制,(2)変性温度の下限の引き下げ,(3)PCRプログラムの短縮について検討することで,温度の制御なしにPCRを成功させることができた.また,開発した実験法を用いたPCRを,大学生を対象に実施したところ,すべての学生で実験が成功した.本研究結果から,変性温度に留意することで,安価かつ簡易的な装置でPCR実験が実現でき,有益な教材として高等学校で受け入れられると期待される.

  • Ⅰ.ジベレリンによるアミラーゼ合成の誘導
    尾山 廣, 森本 弘一, 杉村 順夫
    2019 年 61 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/13
    ジャーナル フリー

    高校生物の教科書には,種子発芽のスキームが記述されているが,実験的に検証することは書かれていない.本研究では,イネ種子の発芽プロセスを調べる1セットの実験教材について報告する.この教材は,次のような6課題の実験から成り立っている:(1)発芽種子に出現するアミラーゼ活性の検出,(2)1 μMジベレリンで処理した無胚半切種子でのアミラーゼ活性,(3)40 μMウニコナゾール処理(ジベレリン生合成阻害剤)による発芽とアミラーゼ合成の阻害,(4)分離した糊粉層からのアミラーゼ活性の検出,(5)培養した糊粉層細胞から分泌したアミラーゼ活性の検出,(6)アブシシン酸による発芽とアミラーゼ合成の阻害.これら一連の実験を通して,発芽におけるジベレリン機能の役割,発芽に伴って検出されるアミラーゼの合成と反応する組織部位,ジベレリンとアブシシン酸の拮抗作用について,より深い理解が期待される.

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