生物教育
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研究論文
  • ―中学校・高等学校教員と臨床遺伝専門医の関心の相違―
    木村 緑, 佐々木 元子, 三宅 秀彦
    2021 年 63 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー

    本邦の教育課程では,「ヒトの遺伝」に関する内容が希薄である.次世代シークエンサーなどのゲノム解析技術の急激な発達により,遺伝医療の発展は目覚ましい.遺伝医療は,倫理的配慮が最も重要とされる医療であり,提供する医療者だけでなく,医療を受ける一般市民の遺伝に関するリテラシーが重要となる.遺伝について正しく理解していない場合,必要のない不安を抱いたり,不適切な選択をしたりすることが危惧される.教育課程においては,生物分野では,ヒト以外の生物に関する遺伝現象が扱われることが多く,また,それ以外の分野でも「ヒトの遺伝」に関してほとんど記載されていない.すなわち,教育課程で「ヒトの遺伝」を十分に習わないため,「ヒトの遺伝」を知らないまま,社会人になることが多い.そこで本研究では,「ヒトの遺伝」教育を国民の多くに普及するために求められていることを探るために,臨床遺伝に携わる臨床遺伝専門医,および中等教育に携わる教員の「ヒトの遺伝」への関心の相違を明らかにすることを目的として,アンケート調査を行った.その結果,臨床遺伝専門医と比べると有意に低かったが,およそ75%の中等教育に携わる教員が「ヒトの遺伝」に興味関心があり,生徒学生に教える必要があると回答した.また,「ヒトの遺伝」を授業で教えた経験のある教員の多くは,倫理的事項に関して,あるいは,教員自身あるいは生徒の理解度に関して苦労したと回答した.さらに,「ヒトの遺伝」を学校教育の現場に取り入れるために,中等教育に携わる教員と臨床遺伝専門医の両者ともに,教える時間とその内容が最も必要であると回答した.しかし,中等教育に携わる教員の中には,「ヒトの遺伝」教育導入の必要性の説明を求める意見もあった.以上のことから,今後,「ヒトの遺伝」を学校現場へ取り入れるためには,教育課程で「ヒトの遺伝」を教える意義を明確に示し,教員の時間を確保し,教える内容を整理し,国に働きかけるなど,より緻密な策略が必要と考えられ,今回,導入に向けた実践案を示した.

  • ―サクラ被害マップの作製と活用―
    倉林 正, 深谷 将, 髙橋 瑛人, 武村 政春
    2021 年 63 巻 1 号 p. 10-21
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー

    本研究は,近年,全国的に被害が拡大している特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」を題材とした教材を開発することで,生物教育で不足している外来生物教材の蓄積および被害地域の防除対策の一助とすることを目的とした.クビアカツヤカミキリは,サクラ類を中心に被害をもたらすことから,本研究では「生物基礎」の授業で身近なサクラの被害状況について調査を行った.調査したサクラの場所は専用のアプリケーションを使って,Web地図に記録することで「サクラ被害マップ」を作製した.この授業実践は,クビアカツヤカミキリに対する認識や理解,保全意識を向上させるなどの教育効果が示された.また,「サクラ被害マップ」の分布データについてクビアカツヤカミキリ対策を行っている公共機関に提供することで,新規被害樹の発見に貢献することができた.

    以上より,本研究で開発した外来生物教材は,生徒たちに様々な教育効果を与えるだけでなく,クビアカツヤカミキリ被害の早期発見に対しても効果が得られた.したがって,本教材は生物教育および地域貢献の双方で,有用性の高い教材であることが明らかとなった.

研究報告
  • 長井 清香, 天内 和人, 笠原 恵
    2021 年 63 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー

    講義形式の異なる2校の高専を比較して,高専における有効な生物学教育法の検討を行った.A高専では,モジュール型アクティブラーニングを実施しており,B高専では,聴講型の講義を実施した.アンケート調査により,生物学の講義に対する学生の意識を比較したところ,勉強の必要性と楽しさの感じ方に差は見られなかった.また,多くの学生が,役立つと感じ,将来も役立てたいと答えた.どちらの講義も満足度が高く,講義の成功が伺えた.しかし,学習意欲に関しては,A高専は,61%の学生がやる気を感じているのに対して,B高専では,40%であった(p = 0.03).また,A高専では,69%の学生が講義を面白かったと答えたのに対し,B高専では,55%しかなかった(p = 0.02).差が見られた要因の一つとして,講義形式の違いが考えられ,モジュール方式,多様な講義形式と評価形式,アクティブラーニング法が,学習意欲の向上と講義を面白く感じることに,有効であることが示唆された.

  • ―中学校第3学年理科「生物の成長と生殖」の授業において―
    中村 依子, 真木 大輔, 向 平和
    2021 年 63 巻 1 号 p. 30-38
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー

    平成29・30年告示中学校・高等学校学習指導要領では,授業改善の在り方として,教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり,学修者の能動的な学修への参加を取り入れた「主体的・対話的で深い学び」での指導への転換が求められている.しかし,中・高等学校においては,従来の知識伝達モデルの授業から学習者中心の知識創造モデルへの転換が困難な状況が指摘されている.また,GIGAスクール構想が推進され,各学校において,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え,これらを適切に活用した学習活動の充実が図られつつある.そのため,各学校ではICTを活用した様々な取り組みが行われているが,教員主体の資料の提示に比べて,協働学習としてのICTの活用は少なく,授業内でICTを活用した協働学習においても,教室内の生徒間での情報共有やグループ等での発表・話し合い,教室外では同じ学校種の報告はあるものの,学校種を超えた協働学習でのICTの活用例は少ない.そこで本研究では,中学校理科(生物)の授業において,自律型学習中心の探究活動に,研究機関を含む異校種との協働学習を促すICTを導入し,その教育効果を明らかにすることを目的とした.探究活動ではカエルの初期胚発生の観察を行い,脊椎動物の発生に関する課題に対して,科学的根拠に基づき探究することをねらいとした.授業後の質問紙調査の結果から,学習の理解において生徒は,一人で行う学習や知識伝達型の一斉授業より,他者との交流や学び合いによる学習者中心の学びの方が有効であると感じていることが分かった.

研究資料
  • ―昆虫に対する嫌悪感の緩和と昆虫を保育に活用する意欲に着目して―
    今井 未来, 田川 一希
    2021 年 63 巻 1 号 p. 39-50
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー

    保育者を目指す大学生の昆虫に対する嫌悪感を緩和し,保育での昆虫の活用の意欲と自信を向上させることをねらいとして,2週間グループで昆虫を飼育し,昆虫を題材とした絵本づくりを行う実践を行った.この結果,昆虫に対する嫌悪感は緩和され,昆虫を保育で扱う意欲は向上した.飼育した昆虫の種類によって嫌悪感の緩和の程度は異なり,カマキリ類を飼育したグループは嫌悪感が緩和された一方で,バッタ・コオロギを飼育したグループでは変化が見られなかった.また,学生の感想の分析から,飼育を通して学生が昆虫に対して愛着を持つようになったこと,昆虫の生態に関する学びを得たことが示唆された.

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