高等学校では学習指導要領が改訂され,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善が求められている.高等学校生物の授業は暗記中心の授業方法や学習方法になりがちなこともあり「暗記科目」と揶揄されることもしばしばある.一方,小学校理科の授業は,高等学校の理科の授業に比べて,授業が好きだや楽しいと好意的に捉えている児童の割合が高い.したがって,小学校理科の学習指導案40授業分,高等学校生物基礎の学習指導案32授業分を対象に授業中の児童・生徒の活動及び教員の活動を調査することで,各校種にある特徴を把握した.
小学校児童に有意に見られた活動は,「振り返る」「予想する」「実験する」「考察する」「見通す」「整理する」であり,高等学校の生徒に有意に見られた活動は,「理解する」「記入する」「説明する」「解答する」であった.一方,小学校教員で有意に多かった活動は,「確認させる」「考えさせる」「比較させる」であり,高等学校教員で有意に多かった活動は,「説明する」「指示する」「指導する」であった.さらに,教員の活動を「内容の説明に関するもの」等の10のグループで分類すると,小学校では「生徒の思考や判断を促すもの」が全体の33.0%,高等学校では「内容の説明に関するもの」が31.5%で最も高い割合となった.
小学生の理科授業が好きである要因として思考活動が挙げられているが,本調査でも思考する活動の割合が高かった.特に「比較する」という理科の考え方を働かせる場面が多数見られることから,小学校では理科の考え方を働かせることを意識した授業づくりが浸透していると言える.一方高等学校では大学受験とも関係して,内容を解説することが多くなっている.理科の考え方を働かせることで思考力の育成につながると言えるので,内容の説明が必要な場面でも,理科の考え方を働かせる場面を設定するといった授業改善が今後求められると考えられる.
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