生物教育
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研究論文
  • 斎木 健一, 黒住 耐二
    2023 年 65 巻 1 号 p. 2-17
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル フリー

    本研究では戦前にさかのぼる古い歴史をもつ千葉,静岡,大阪,福岡の高等学校14校に保存されている哺乳類と鳥類の剥製標本731点を調査し,その実態を明らかにしたうえで,当時の法令,教科書その他の文献等の資料をもとに標本が教育上のどのような必要性から揃えられたのかを推定し,今後の活用方法について考察した.剥製標本は1900(明治33)年以降に購入されたものが多く確認された.その目的は,実物の観察を通して正確な概念を得るためであったが,実際には教科書の記述内容を目視により確認する目的で使用されたと推定される.このため,剥製標本の種類は当時の教科書での哺乳類・鳥類分類体系に沿って目のレベルで分類群を網羅するように選ばれていた.しかし,1942(昭和17)年に行われた中学校教授要目の改正で,扱う分類群が綱レベルまでに変更され,内容も生物の生態や生理を重視したものに変更されたため,目ごとに剥製標本で形態を確認するような授業は行われなくなり,購入標本もほとんど認められなくなった.現在では,高等学校学習指導要領に哺乳類,鳥類の目レベルの分類に関する内容はない.しかし教科書には,保護色や擬態,相同に関する説明など分類以外で剥製を活用できる箇所は多い.また,剥製標本には,種の保存法やワシントン条約等で取引が規制され希少かつ入手困難な標本も多く,生物多様性保全や生態系保全などを考える際の教材としての活用も期待できる.

研究報告
  • 高橋 哲也, 小椋 郁夫, 廣渡 洋史, 池田 雅志, 岩澤 淳, 倉田 梓, 大曽 基宣, 村田 公一
    2023 年 65 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル フリー

    脊髄反射の1つであるしつがい腱反射を,専門家でなくても,なおかつ専門の道具を使用しなくても高い確率で体験することができる実験を開発しようとした.小学校教員課程の学生は,新聞紙を長辺の中央で2つに折り,これを4回行った後,短辺を中心として丸めて新聞紙棒を作成した.この新聞紙棒をしつがい骨の下部の凹部に当て,その上をこぶしで打撃することでしつがい腱反射を誘起した.その誘起率は,新聞紙棒の直径が17 mmまたは18 mmのときに,打腱器を使用した場合よりも高かった.これは新聞紙棒を細く巻くことで適度な硬さが得られ,かつ打撃部位を正確にとらえることができるためであると考えられた.小学校教員課程の学生が理学作業療法を専攻する学生の場合と同様の誘起率を示すことができたことから,本研究によって人体に関する専門家でなくてもしつがい腱反射を高い確率で体験することを可能とした教材開発ができたと考えられる.

  • 枦 勝, 小島 桂
    2023 年 65 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル フリー

    高等学校の生物において,酵素以外でタンパク質の性質を理解するための実験や,遺伝子組換え技術に興味を持つことができる実験が求められている.そこで,本研究では,遺伝子組換えカイコの蛍光シルク繭(GFP繭やRFP繭)を利用したタンパク質の性質を理解するための実験を検討した.その結果,蛍光シルク繭の切片は高温や強い酸性や強いアルカリ性につけることで蛍光を発しなくなったり,蛍光が少なくなったりすることが確認できた.教育実践を行ったところ,タンパク質が高温で変性することや強い酸性や強いアルカリ性で変性することが分かったという生徒が多かった.また,GFPやRFPが蛍光を発する条件を見つける実験などを通じて,蛍光タンパク質についても学ぶことができる授業となった.この実験の授業は,状況に応じて,授業数を変えたり,探究活動を重視したりすることが容易であり,実験の用意や片付けも簡単である.これらのことから,蛍光シルク繭は,タンパク質の変性を理解する教材としても,遺伝子組換え技術について興味を持つようになる教材としても有用である可能性が示唆された.

  • 野地 楓, 深谷 将, 山野井 貴浩
    2023 年 65 巻 1 号 p. 30-41
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル フリー

    GIGAスクール構想により1人1台のタブレット端末の整備が進み,ICTを活用した学習活動の充実が目指されており,生物教育においては観察活動の充実が期待される.そこで本研究では,小学校4年理科「季節と生物」の単元において利用できる生物マップ作製アプリを開発し,そのアプリを用いた授業実践により有効性と操作性の評価を行った.このアプリを用いることで,タブレット端末で撮影した生物の写真をアプリ上の地図にピンとして記録でき,学級全員の結果を共有することで生物マップを作ることができる.授業の前後に行った児童への質問紙調査および授業で使用したワークシートの分析結果から,アプリは小学4年生の児童でも問題なく操作できること,いつもの授業(アプリを使っていない理科授業)よりも観察結果を相互に確認する頻度が高かったこと,授業により生物の季節変化に対する理解の深まったことが示唆された.授業のどのような要素が理解につながったかについては本研究の結果からは言及できず,今後の課題である.

研究資料
  • 千賀 しほ, 大鹿 聖公
    2023 年 65 巻 1 号 p. 42-49
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル フリー

    本研究では,全国1道,6県の小中学校の教員615名を対象に,動物園・水族館との教育連携に関するアンケート調査を実施し,その結果から現状と課題について明らかにした.アンケート調査の結果から,全体の約7割の教員が動物園や水族館を学校行事の中で活用していることがわかった.しかし,授業での活用は2割以下となっていることが明らかとなった.小中教員いずれも動物園や水族館との連携については,理科のみならずさまざまな教科での利用と効果を期待しているが,従来から述べられてきた距離,時間,費用などの物理的な理由に加え,教材・資料に関する情報不足によって具体的な連携が実施しにくい課題があることもわかった.今後,動物園や水族館との教育連携をより広めていくためには,学校や施設にとって実施しやすい具体的な教育連携のシステムや形態を模索する必要がある.

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