生物教育
Online ISSN : 2434-1916
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研究報告
  • 枦 勝, 岩崎 優, 重村 泰毅
    2024 年 65 巻 2 号 p. 72-78
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/30
    ジャーナル フリー

    綿はマイクロプラスチックなどの環境汚染物質を発生させない天然繊維である.さらに綿実殻からは糖(キシロース)を生成できることがわかっている.しかしながら,高等学校の生物では,綿や糖の実験はあまり開発されていない.このようなことから,本研究では綿の繊維や綿実殻から各種の糖(グルコースやキシロース)を抽出(生成)する方法を確立した.そこで得られた糖は糖試験紙,ビアル反応,薄層クロマトグラフィー,及びアミノカルボニル反応といった各種の方法で分析することができた.これらの方法を教育実践したところ,高等学校の授業で実施でき,生徒の糖の学びの助けとなることがわかった.このことで,この本研究は,実験の技能を身に付けつつ,衣類・環境・食と関連した糖を学習する教材の第一歩となった.

  • 園山 博
    2024 年 65 巻 2 号 p. 79-86
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/30
    ジャーナル フリー

    高等学校では学習指導要領が改訂され,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善が求められている.高等学校生物の授業は暗記中心の授業方法や学習方法になりがちなこともあり「暗記科目」と揶揄されることもしばしばある.一方,小学校理科の授業は,高等学校の理科の授業に比べて,授業が好きだや楽しいと好意的に捉えている児童の割合が高い.したがって,小学校理科の学習指導案40授業分,高等学校生物基礎の学習指導案32授業分を対象に授業中の児童・生徒の活動及び教員の活動を調査することで,各校種にある特徴を把握した.

    小学校児童に有意に見られた活動は,「振り返る」「予想する」「実験する」「考察する」「見通す」「整理する」であり,高等学校の生徒に有意に見られた活動は,「理解する」「記入する」「説明する」「解答する」であった.一方,小学校教員で有意に多かった活動は,「確認させる」「考えさせる」「比較させる」であり,高等学校教員で有意に多かった活動は,「説明する」「指示する」「指導する」であった.さらに,教員の活動を「内容の説明に関するもの」等の10のグループで分類すると,小学校では「生徒の思考や判断を促すもの」が全体の33.0%,高等学校では「内容の説明に関するもの」が31.5%で最も高い割合となった.

    小学生の理科授業が好きである要因として思考活動が挙げられているが,本調査でも思考する活動の割合が高かった.特に「比較する」という理科の考え方を働かせる場面が多数見られることから,小学校では理科の考え方を働かせることを意識した授業づくりが浸透していると言える.一方高等学校では大学受験とも関係して,内容を解説することが多くなっている.理科の考え方を働かせることで思考力の育成につながると言えるので,内容の説明が必要な場面でも,理科の考え方を働かせる場面を設定するといった授業改善が今後求められると考えられる.

研究資料
  • ―日本各地の野菜を対象とした探究活動の検討―
    細野 春宏
    2024 年 65 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/30
    ジャーナル フリー

    生物研究の材料として盛んに使われるようになった細胞性粘菌は,高校教育で扱うには,食物源である細菌の培養,種株の入手,種の同定などの多くの困難がある.本研究では,スーパーマーケットなどで購入した泥付き野菜の土壌から細胞性粘菌を分離し,子実体の形態的特徴から種の同定を行った.多くの種が分離できる森林土壌に比べ,畑の土壌は細胞性粘菌の存在密度が高いにもかかわらず,種数は少ないことから.土壌からの分離同定が比較的容易であった.そして本調査の結果から,各地方の各野菜から分離できる可能性のある種を,ある程度予想できるようになった.また,細胞性粘菌の食物源については口内細菌を用いることで高校生にも実践可能な方法を提示した.これらの結果から,細胞性粘菌の教材化に伴う困難はある程度解消すると思われる.

    北海道,東北,関東,九州由来の野菜から分離培養された細胞性粘菌の種組成は違いが見られた.この原因の一つとして,食物源となる土壌中の細菌類の種類の違いが考えられた.九州より南の畑からは亜熱帯性の種が分離できた.また,日本ではまれな種が分離できたが,この種は海外から輸入されたものに付着して来た結果として生じたのではないかと思われた.

特集 第108回全国大会シンポジウム
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