現在,細胞外浸透圧を変化させゾウリムシの収縮胞を観察するという実験が広く行われている.40年以上もの間,この細胞外浸透圧の調整にNaClが用いられてきた.しかし理想モデルを考えた場合,NaClを使った実験ではモデルに沿わない結果となる.
これに対して,細胞内への吸収は無視できるスクロースなどの非電解質では,理想モデルとよく合致する結果が得られた.結論として,実験にはNaClではなく,スクロースのような非電解質を細胞外浸透圧の調整に用いるべきであることが判った.これはゾウリムシの細胞内外でNa+の移動があり,さらにそれが細胞内浸透圧の調節に関係しているためと推察される.
更に,たとえば100mMスクロースのような高い浸透圧条件下では,細胞は急速に縮み,収縮胞は機能を停止した.しかし約1時間後には細胞は,ほぼ元の形に膨らみ,収縮胞は再び働き始めた.この反応は,高浸透圧ストレスに対する細胞の順応であると考えられる.このようにして,生徒は簡便な実験で,高,または低浸透圧ストレスに対するゾウリムシの反応を確かめることができる.