生物教育
Online ISSN : 2434-1916
Print ISSN : 0287-119X
研究論文
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法におけるプライマーの働きの理解を目的とした生物授業の実践
園山 博渥美 茂明
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 59 巻 3 号 p. 158-166

詳細
抄録

高等学校学習指導要領の改訂により,高校生物では,多くの分子生物学的現象を扱うようになった.その中でも,PCR法は分子生物学研究の基盤技術であり,その原理の理解は,他の技術の理解や習得に不可欠である.しかし,教科書でのPCR法の説明では,プライマーはどのようなものか,鋳型DNAにどのように結合するかの説明が不十分であり,プライマーを両端として伸長される新生鎖がPCR法で生じる増幅領域となる理由を生徒が深く理解することができないと考えられる.

そこで,プライマーDNAが鋳型DNAに結合することを理解するのに必要な解説と図を含んだワークシートを作成した.フォワードプライマーとリバースプライマーのそれぞれが,鋳型DNAに結合する位置と,各プライマーDNAが結合する向きおよび新生鎖の伸長方向を学ぶ内容である.このワークシートを利用し,増幅されるDNA断片の大きさを測る実験を行うことと,増幅されるDNA断片の領域を遺伝子の塩基配列から探す課題とを併用した授業計画を立案した.授業後,65%の生徒がプライマーDNAにより増幅される鋳型DNAの領域を正しく答えることができた.作成したワークシートによる学習が,プライマーの働きを理解するのに有効であったためと考えられる.

著者関連情報
© 2018 一般社団法人 日本生物教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top