生物教育
Online ISSN : 2434-1916
Print ISSN : 0287-119X
研究資料
塩基の相補性を確実に示すDNA教材の重要性
内山 智枝子武村 政春
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 61 巻 3 号 p. 170-179

詳細
抄録

DNAの構造は,現行の学習指導要領の下での高等学校「生物基礎」で学習することが定められている.一方次期学習指導要領においては,「DNAの構造に関する資料に基づいて,遺伝情報を担う物質としてのDNAの特徴を見いだして理解するとともに,塩基の相補性とDNAの複製を関連付けて理解すること」と記され,資料に基づいて特徴を見いだした上での理解が求められるようになった.この資料としてDNAの構造を示す図の活用が考えられるが,図に限らず,DNAの構造に関するどういった教材の提示が,DNAの特徴を見いだし,塩基の相補性とDNAの複製を関連付けた理解に結び付けるために有効なのだろうか.この問いを明らかにするために,DNAの構造を示す図のような平面的な資料だけでなく,先行研究において活用による学習効果が報告されている模型にも着目した.本研究では,既に塩基が対になって描かれているDNAの構造を示すイラスト,ヌクレオチドの形に対称性があるか否かに違いがある2種類のペーパークラフト,ならびに正しい塩基対しか形成しないLego®ブロックと磁石を用いた模型の4種類のDNA教材について,これらを提示する検証授業を高等学校1年生対象に実施し,その学習効果を検証するために,検証授業の前後に質問紙調査を行った.質問紙調査の結果,イラストならびにLego®ブロックと磁石を用いた模型の使用が,生徒が塩基の相補性を正しく認識することを促していることが明らかとなった.この2種類のDNA教材は,誤った塩基対が形成されないよう工夫されているが,ほかの2種類のペーパークラフトは誤った塩基対も形成し得るつくりになっている.このことから,塩基の相補性を確実に示す(誤った塩基対は形成されない)DNA教材が,生徒の正しい認識を促すのに有効であることが示唆された.またこれらのDNA教材の提示により,相補性に関する問題の正答者は複製に関する問題に対して正答する割合が大きいことが明らかになった.

著者関連情報
© 2020 一般社団法人 日本生物教育学会
前の記事
feedback
Top