行動医学研究
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症例報告
内科診療所での糖尿病腎症患者に対する行動医学チーム医療に臨床心理士を加える試み
中村 菜々子 多木 純子
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2015 年 21 巻 1 号 p. 31-38

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抄録
透析導入前の糖尿病腎症に対する行動医学に基づくチームによる介入は重要であるが、総合病院と比較して糖尿病を専門とする内科診療所で実施することは難しい。我々は、内科診療所に通院する糖尿病腎症患者に対し、10ヵ月にわたって、多職種による治療を行った。この治療では、管理栄養士による指導と臨床心理士による心理面接が含まれていた。内科診療所に通院中の糖尿病腎症患者10名(平均年齢67.4歳)が治療に参加した。2012年7月から10ヵ月間、管理栄養士の個別・集団指導と認知行動療法を専門とする臨床心理士の個別面接を実施した。栄養指導と心理面接は、月1回の再診の際に実施した。これらに加え、臨床心理士はスタッフの関わり方をアセスメントし、スタッフへコンサルテーションを行った。併せて得られた情報を元に、医師とコメデイカルで合同カンファレンスを開催した。介入から5ヵ月後にe-GFRが有意に改善した(p = .05)。尿酸(p = .02)と総コレステロール(p = .02)は10カ月後に有意に減少した。また、カリウム摂取制限(p = .01)、他患者との会話(p = .03)、栄養指導を守る自信(p = .03)、不快な症状(p = .002)や病気に伴うストレス緩和の自信(p = .09)、腎症の自覚症状(p = .08)が有意に増加した。内科診療所は時間やその他のリソースが限られているが、そのような条件の下でも、糖尿病腎症への行動医学アプローチを行うことの有効性が示唆された。
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© 2015 日本行動医学会
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