行動医学研究
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冒頭言
原著
  • 富田 望, 南出 歩美, 熊野 宏昭
    2020 年 25 巻 p. 3-13
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/07
    ジャーナル フリー
    社交不安においては、自己注目(自己の思考や身体感覚への過度な注意)と外部環境への注意バイアス(他者へ の過度な注意)という注意の問題が指摘されている。本研究は、自己注目と注意バイアスを生じさせるメタ認知的信念を測定する 尺度を作成し、信頼性と妥当性を検討することを目的とした。自己注目と注意バイアスのそれぞれについて、ポジティブなメタ認知 的信念とネガティブなメタ認知的信念の2因子構造を想定し、「高社交不安者における注意の向け方に関するメタ認知的信念尺度」 を作成した。その後、学生253名に対して質問紙調査を実施した。探索的因子分析によって項目を抽出し、確認的因子分析で構 造的妥当性を確認した後、内的整合性を確認するためにα係数を算出した。また、基準関連妥当性を検討するために、社交不安症 状を測定する尺度との相関係数を算出した。さらに、構成概念妥当性を検討するために、各下位尺度と、それぞれに類似する概念 もしくは異なる概念を測定する尺度との相関係数を算出した。信頼性の検討については、2週間の間隔をあけた再テスト法を用いた。 分析の結果、自己注目に関するメタ認知的信念を測定する2因子8項目と注意バイアスに関するメタ認知的信念を測定する2因子8 項目から構成される質問紙が作成された。信頼性と妥当性については、「自己注目に関するポジティブなメタ認知的信念」の基準関 連妥当性および構成概念妥当性を除いて、概ね十分な信頼性と妥当性が示された。今後、本尺度を用いることで、メタ認知的信 念を含めて社交不安における自己注目と注意バイアスの関係性を検討することが可能になると考えられる。
  • 梅田 亜友美, 高橋 恵理子, 池田 寛人, 根建 金男
    2020 年 25 巻 p. 14-22
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/07
    ジャーナル フリー
    マインドワンダリングとは、現在遂行中の作業や課題から、それと無関係な思考へと注意が移る現象であり、ネガ ティブ感情と双方向に関係することが示されている。そのため、マインドワンダリングの理解および制御法の検討が必要であると考 えられる。マインドワンダリングの制御には、マインドフルネストレーニング(MT)が有効である可能性が示唆されている。しかし、 MTがマインドワンダリングを減少させるメカニズムの詳細については明らかにされていない。そのため、本研究では注意制御機能に 着目し、マインドフルネスおよび注意制御機能と、マインドワンダリングおよび感情の関係を検討した。研究1では、149名の大学 生および大学院生を対象に質問紙調査を実施し、共分散構造分析を行った。その結果、注意制御機能が高まり、マインドワンダリ ングが減少することによって、ネガティブ感情が低減すること、マインドフルネスのアクセプタンスが直接ネガティブ感情を低減する ことが示唆された。研究2では、注意制御機能を高める注意訓練(ATT)とMTを実施し、マインドワンダリングおよび感情に与え る影響について比較検討した。実験参加者は、MT群(n=13)、ATT群(n=13)、統制群(n=11)にランダムに割り振った。 実験は2週間の期間をおいて、プレテストとポストテストの2日間にわたって行った。プレテストでは、質問紙セットへの回答を求めた 後、MT群は20分間のMTに取り組むことを、ATT群は15分間のATTに取り組むことを、統制群は15分間眠らずに何もしないよう にすることを、それぞれ求めた。その後、全ての群でSustained Attention to Response Task(SART)を実施し、マインドワン ダリングを測定した。MT群およびATT群には、ポストテストまで2週間毎日トレーニングを行うように、統制群には普段通り過ごす ように、それぞれ求めた。プレテストとポストテストは、同様の手続きであった。操作チェックの結果、ATT群では注意制御機能が 向上していたが、MT群では今ここに存在することのみ得点が向上していた。マインドワンダリングについて、SART errorは統制群 のみで得点が向上しており、MT群およびATT群ではマインドワンダリングを制御することが可能になった可能性が考えられる。ま た、抑うつ、不安のネガティブ感情については、群間に差がみられなかった。研究2の結果から、マインドワンダリングの制御には、 注意制御機能およびマインドフルネスのアクセプタンスが有効である可能性が示された。マインドワンダリングは一般的・日常的な 現象であることから、マインドワンダリングの制御に困難感を抱いている人は少なくないと考えられる。本研究によって、マインドワ ンダリングの理解および制御法に関する有益な知見が得られたと考えられる。
  • 内田 太朗, Takahashi Toru, 仁田 雄介, 熊野 宏昭
    2020 年 25 巻 p. 24-34
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/07
    ジャーナル フリー
    セルフコンパッション(Self-compassion:SC)とは、苦痛の緩和のために慈しみをもって自分に接することであ る。SC特性は、精神的健康と関連があることが、様々な調査研究で明らかにされてきた。しかしながら、先行研究において、SC は特性あるいは状態として測定されてきたため、SCが日常生活場面で具体的にどのように実行されているかは不明である。また、実 際の日常生活場面におけるSCをアセスメントするツールがないため、臨床現場などにおいて、SCに対する介入効果を十分に検討す ることができない。これらの問題を解決するための方法の1つに、SCを特性や状態としてではなく、具体的な行動として測定するこ とが考えられる。そこで、本研究では、臨床行動分析の機能的アセスメントの枠組みに基づき、行動の形態および行動の結果の2 つの観点からSC行動を測定する方法を開発し、その妥当性を検討することを目的とした。大学生および大学院生31名を対象とし、 日常生活場面における、SC行動を測定する質問項目を用いて、携帯端末を用いた調査を実施した。SC行動の形態(項目は「自分 自身をなだめる」「優しさをもって自分に接する」「苦痛を緩和しようとする」「セルフヴァリデーションをする」)および行動の結果(項 目は「落ち着きの増加」「自分への優しさの増加」「苦痛の緩和」「自己批判の減少」)をそれぞれ説明変数とし、状態SC、状態 well-being、アクセプタンスをそれぞれ目的変数としたマルチレベル単回帰分析を行った。分析の結果、SC行動の形態の項目「自 分自身をなだめる」、「優しさをもって自分に接する」、「苦痛を緩和しようとする」は、状態SCの高さを有意に予測した。また、SC行 動の結果の項目「落ち着きの増加」、「自分への優しさの増加」、「苦痛の緩和」は、状態SCの高さを有意に予測し、「自己批判の 減少」は、状態SCの高さを有意傾向で予測した。これらの結果から,本研究で作成したSC行動を測定するおおよその項目は、妥 当であることが示唆された。SC行動の形態の項目「自分自身をなだめる」は、状態well-beingの高さを有意傾向で予測し、SC行 動の結果の項目「苦痛の緩和」は状態well-beingの高さを有意に予測した。しかし、それら以外のSC行動の形態および結果の項 目は、状態well-beingの高さを有意に予測しなかった。これらの結果から、SC行動後の60分以内における状態well-beingは増加 しない可能性がある。今後の研究では、SC行動がその後のwell-beingを増加させるかどうかをより詳細に検討するために、SC行 動と(1)本研究で測定されなかった状態well-beingの要素との関連性を検討、(2)60分以降あるいは1日全体の状態well-being との関連性を検討、(3)well-being特性との関連性を検討することが必要である。SC行動の形態の項目「自分自身をなだめる」、 「優しさをもって自分に接する」、「苦痛を緩和しようとする」は、アクセプタンスの高さを有意に予測した。また、SC行動の結果の項 目「自分への優しさの増加」「自己批判の減少」は、アクセプタンスの高さを有意に予測し、「落ち着きの増加」は、アクセプタンスの高さを有意傾向で予測した。これらの結果から,SC行動の種類によって,アクセプタンスの高さを予測する程度が異なることが示 された。本研究の限界点として、SC行動の先行条件および確立操作を検討できなかったことが挙げられる。今後の研究で、どの ような文脈下でSC行動が生起しやすいのかを検討することや、ルールなどを含めた確立操作がSC行動の生起に与える影響を検討 することが望まれる。そうすることにより、SC行動を生起・維持させる変数に関する知見が蓄積され、機能的アセスメントの枠組 みからSC行動をより詳細に捉えることが可能となると考えられる。
  • 荒木 誠一, 中尾 睦宏, 安田 秀喜, 安西 信雄
    2020 年 25 巻 p. 35-43
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/07
    ジャーナル フリー
    被養育体験を終えて間もない時期における大学生の失感情症、被養育体験、慢性疼痛との関係性を調査するため に、慢性疼痛の有無とその部位、失感情症を表す心理指標であるToronto Alexithymia Scale-20(TAS-20)、両親の養育態度 を表すParental Bonding Instrument(PBI)の質問紙調査をおこなった。その結果、6ヵ月以上疼痛が持続する慢性疼痛の有訴 率は、435人中125人で28.7%であった。慢性疼痛部位は、最多が腰痛、2番目が頸部痛、3番目が下肢痛であった。慢性疼痛 保有群と慢性疼痛非保有群とを比較したところ、慢性疼痛保有群でTAS-20の総得点が有意に高かった。PBIについては、慢性 疼痛保有群と慢性疼痛非保有群との間に有意な得点差は認められなかった。失感情症の3つの下位尺度である感情同定困難、感 情伝達困難、外的志向が高まると被養育体験の父・母ケア因子が低くなり父・母過干渉因子が高くなる有意な相関関係が認めら れた。慢性疼痛の有無を目的変数に、年齢、性別、TAS-20の下位尺度である感情同定困難、感情伝達困難、外的志向、PBI の下位尺度である父ケア因子、父過干渉因子、母ケア因子、母過干渉因子の9つを説明変数とする多重ロジスティック回帰分析の 結果、TAS-20の下位尺度である感情同定困難が慢性疼痛に有意に関連していた。青年期から慢性疼痛を有する人に対し失感情 症傾向を評価し早期発見する重要性が示唆された。失感情症傾向がある人には、養育経験にも配慮し、早期のうちに自分の未分 化な感情をラベリングし言語化表現できるように訓練すれば慢性疼痛の予防につながるかもしれない。
  • 中䑓 桂林, 笠巻 純一
    2020 年 25 巻 p. 44-54
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/07
    ジャーナル フリー
    【緒言】高度情報化に伴い、インターネットなどを通じて多くの健康情報が氾濫するようになった。その中には、信 頼性の低い情報が混在しており、また、それによる健康被害も多く報告されている。そのため、現代社会においては、健康情報を 入手し、理解し、活用する力であるヘルスリテラシーが必要である。そこで、本研究では文献レビューから得た日本のヘルスリテラ シー尺度の質問項目について、WHO(1998)の定義で示される意欲、知識、能力の分類に基づいてヘルスリテラシー尺度を分析 し、構造を明らかにすることを目的とした。【方法】文献検索にはCiNii、メディカルオンライン、google scholar、国立国会図書館 のデータベースを用いた。検索キーワードは「ヘルスリテラシー」や「尺度」に関する用語を投入した。抽出された文献を適格基準 と照合させ、文献を特定した。さらに、質問項目の詳細を明らかにするため、抽出された日本のヘルスリテラシー尺度の全質問項目 について、WHO(1998)の定義を参考に、「意欲(意図)」、「知識・理解」、「能力」の3つに分類し、内容を検討した。さらに、 質問項目の詳細を明らかにするため、構成要素それぞれについて詳細分類を設定した。【結果】本研究で抽出されたヘルスリテラシー 尺度は12尺度のうち、重複を除く10尺度133項目を検討対象とした。3つの構成要素に分類した結果、全質問項目に対する割合 は「意欲(意図)」が21項目(15.8%)、「知識・理解」が57項目(42.9%)、「能力」が54項目(40.6%)であった。各構成 要素における詳細分類の内容、および項目数(構成要素内の割合)を以下に示す。「意欲(意図)」は〈情報収集意欲〉が10項 目(47.6%)、〈行動意欲〉が6項目(28.6%)、〈興味・関心〉が4項目(19.0%)、〈コミュニケーション〉が1項目(4.8%)で あった。「知識・理解」は〈情報の理解〉が35項目(61.4%)、〈言語・計算〉が17項目(29.8%)、〈情報検索の知識〉が4項 目(7.0%)、〈情報活用の知識〉が1項目(1.8%)であった。「能力」は〈評価・判断力〉が26項目(48.1%)、〈情報収集力〉 が16項目(29.6%)、〈コミュニケーションスキル〉が7項目(13.0%)、〈意思決定・行動力〉が5項目(9.3%)であった。なお、 「意欲(意図)」、「知識・理解」、「能力」のいずれにも該当しない項目(その他)が1項目であった。本研究において、我が国で開 発されているヘルスリテラシー尺度は「意欲(意図)」を評価できる尺度が最も少ないことが明らかになった。また、「意欲(意図)」 は〈興味・関心〉と〈コミュニケーション〉、「知識・理解」は〈情報検索の知識〉と〈情報活用の知識〉、「能力」は〈コミュニ ケーションスキル〉と〈意思決定・行動力〉の質問項目の割合が相対的に少ないことが明らかになった。【考察】多様化・複雑化 する健康問題の解決に向けて、氾濫する情報に対する批判的思考と情報の判断、コミュニケーションの意欲やスキルを含む尺度の 開発、およびそれらを活用したヘルスサービスへの応用が望まれる。
記念賞受賞報告
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