抄録
本研究の目的は、縦断調査を通じて小学校から中学校への移行期に起きる抑うつ症状の発達的変化を明らかにする
ことであった。調査開始時点で小学6年生であった113名を対象とし、小学校6年生では6月(Time 1)、11月(Time 2)、翌年の2月(Time 3)に測定した。中学校進学後では7月(Time 4)に測定を実施した。質問紙に欠損のなかった88名が分析対象となった。分析の結果、対象者全体としては小学6年生から中学1年生にかけて抑うつ症状は増加するものの、小学6年生時のリスク状態によって抑うつ症状の発達的変化は異なる経過をたどることがわかった。リスクの低い子どもは一次関数的(直線的)に抑うつ症状が増加するのに対し、リスクが高い子どもは二次関数的(曲線的)に抑うつ症状が推移することが明らかにされた。これらの結果から、小学校から中学校への移行期における子どもの抑うつ症状の変化について議論された。