行動医学研究
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原著
マインドフルネス、注意制御機能、 マインドワンダリングおよび感情の関連
梅田 亜友美高橋 恵理子池田 寛人根建 金男
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2020 年 25 巻 p. 14-22

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抄録

マインドワンダリングとは、現在遂行中の作業や課題から、それと無関係な思考へと注意が移る現象であり、ネガ ティブ感情と双方向に関係することが示されている。そのため、マインドワンダリングの理解および制御法の検討が必要であると考 えられる。マインドワンダリングの制御には、マインドフルネストレーニング(MT)が有効である可能性が示唆されている。しかし、 MTがマインドワンダリングを減少させるメカニズムの詳細については明らかにされていない。そのため、本研究では注意制御機能に 着目し、マインドフルネスおよび注意制御機能と、マインドワンダリングおよび感情の関係を検討した。研究1では、149名の大学 生および大学院生を対象に質問紙調査を実施し、共分散構造分析を行った。その結果、注意制御機能が高まり、マインドワンダリ ングが減少することによって、ネガティブ感情が低減すること、マインドフルネスのアクセプタンスが直接ネガティブ感情を低減する ことが示唆された。研究2では、注意制御機能を高める注意訓練(ATT)とMTを実施し、マインドワンダリングおよび感情に与え る影響について比較検討した。実験参加者は、MT群(n=13)、ATT群(n=13)、統制群(n=11)にランダムに割り振った。 実験は2週間の期間をおいて、プレテストとポストテストの2日間にわたって行った。プレテストでは、質問紙セットへの回答を求めた 後、MT群は20分間のMTに取り組むことを、ATT群は15分間のATTに取り組むことを、統制群は15分間眠らずに何もしないよう にすることを、それぞれ求めた。その後、全ての群でSustained Attention to Response Task(SART)を実施し、マインドワン ダリングを測定した。MT群およびATT群には、ポストテストまで2週間毎日トレーニングを行うように、統制群には普段通り過ごす ように、それぞれ求めた。プレテストとポストテストは、同様の手続きであった。操作チェックの結果、ATT群では注意制御機能が 向上していたが、MT群では今ここに存在することのみ得点が向上していた。マインドワンダリングについて、SART errorは統制群 のみで得点が向上しており、MT群およびATT群ではマインドワンダリングを制御することが可能になった可能性が考えられる。ま た、抑うつ、不安のネガティブ感情については、群間に差がみられなかった。研究2の結果から、マインドワンダリングの制御には、 注意制御機能およびマインドフルネスのアクセプタンスが有効である可能性が示された。マインドワンダリングは一般的・日常的な 現象であることから、マインドワンダリングの制御に困難感を抱いている人は少なくないと考えられる。本研究によって、マインドワ ンダリングの理解および制御法に関する有益な知見が得られたと考えられる。

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