行動療法研究
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バイオフィードバックによる心拍率制御に関する研究(1) : 呼吸率統制下におけるフィードバックの性質とその有効性の関係(<特集>不安のコントロール)
根建 金男上里 一郎中村 隆弘
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1985 年 10 巻 2 号 p. 123-135

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抄録
本研究では,被験者に呼吸率統制をさせた状態で,認知的方略を使用させるとき,バイオフィードバックの性質,特に,フィードバックのタイプと頻度が心拍率制御にどのような効果を及ぼすかを検討した。被験者は,大学生女子36名で,フィードバックのタイプ,頻度の組み合わせからなる4条件に9名ずつ振り分け,各フィードバック条件下で心拍率の増加,減少の両課題を行わせた。この結果,呼吸率統制条件下でも,バイオフィードバックによって,心拍率の増加,減少が生起することが示された。ただし,従来の呼吸率を統制していない研究の結果と異なり,本研究では,増加,減少両課題における心拍率変化の絶対量には差がなかった。これは,呼吸率統制の影響として,増加課題でのパフォーマンスが低くなったためであろう。フィードバックのタイプについては,増加課題でproportionalがbinaryよりすぐれていたのに対して,減少課題では差がなかった。また,頻度については,増加,減少両課題でともに,1秒に1回ずつ,5秒に1回ずつの条件で効果に差がなく,Gatchel(1974)の研究などとは,増加課題での結果がくい違っている。これは,本研究で,頻度を拍数ではなく,時間間隔によって定義したことによると考えられるが,今後は問題の少ない時間間隔による定義が望まれる。セッションの進行にともなう心拍率変化については,増加課題では初期に急激に上昇し,ある程度減少したのち,安静時より高い一定の水準を維持するパターンがみられた。減少課題では,初期に安静時より低い水準まで下降し,以後その水準を維持するというパターンであった。増加課題で漸増がみられなかった理由としては,呼吸率統制の影響が考えられる。また,増加課題において,いったん急上昇した心拍率がその後下降したことについては,認知的方略の効果が,セッションを追うにつれて薄らいできたものと推定される。なお,増加課題では,成功すると主観的にもリラックスの程度が浅くなることが多いのに,減少課題では,成功したからといって,リラックスの程度が深まることが多くはなかった。減少課題での結果は,呼吸率統制による心理的緊張や負担を反映したものかも知れない。今後の研究では,より洗練されたデータを得るため,このような現象を除くような十分な配慮が望まれる。
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© 1985 一般社団法人 日本認知・行動療法学会
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