行動療法研究
Online ISSN : 2424-2594
Print ISSN : 0910-6529
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原著
  • 武部 匡也, 岸田 広平, 佐藤 美幸, 高橋 史, 佐藤 寛
    2017 年 43 巻 3 号 p. 169-179
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、児童青年期の感情としての怒りの測定に特化した子ども用怒り感情尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することであった。小学4年生~中学3年生を対象に予備調査(n=101)および本調査(n=1,088)を実施した。その結果,1因子7項目の子ども用怒り感情尺度が作成され、「COSMIN」に基づいて検討したところ,十分な信頼性と部分的な妥当性が確認された。また,性別と発達段階で得点に差が認められ,男女ともに発達段階が上がるにつれて怒りを強く抱く傾向があること,そして,男子は女子に比べてその傾向が顕著であることが示唆された。さらに,項目反応理論による項目特性の分析では,子ども用怒り感情尺度は怒りを母平均よりも強く抱いている子どもに対して十分な測定精度を有していた。最後に,子ども用怒り感情尺度が怒りの認知行動療法に関する研究と実践の発展に貢献する可能性と本研究の限界,そして今後の課題が議論された。

資料
  • 中齋 美咲, 大月 友, 桂川 泰典
    2017 年 43 巻 3 号 p. 181-190
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー

    Acceptance and Commitment Therapy(ACT)では心理的柔軟性が精神健康の向上に重要だとされるが、ACTの基盤となる関係フレーム理論(RFT)の観点からこれを支持した実証研究は少ない。そこで本研究はルール制御下の行動変動性に着目し、ACTの心理的柔軟性モデルをRFTの観点から検討することを目的とした。実験参加者に質問紙と行動変動性測定用コンピュータ課題を実施した。分析対象者19名のデータで相関分析と階層的重回帰分析を行った結果、AAQ-IIと行動変動性指標間の相関が弱い一方で、AAQ-IIおよび行動変動性指標はそれぞれGHQ-60と相関がありGHQ-60を予測、説明できる可能性が示された。したがってルール制御下の行動変動性はAAQ-IIと異なり心理的柔軟性の一要素を測定する指標となりうる可能性が考えられ、ACTの心理的柔軟性モデルはRFTの観点から支持されると示唆された。

実践研究
  • 宮崎 哲治
    2017 年 43 巻 3 号 p. 191-202
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー

    曝露反応妨害法(ERP)や認知療法と薬剤調整の連携により回復し、復職に至ったHIV感染恐怖を伴う遷延したうつ病患者を経験したので報告する。HIV感染恐怖もうつ病の維持要因であったため、薬剤調整を行い、体が楽になったタイミングでHIV感染恐怖に対しERPを導入した。このため、ERPをすればHIV感染恐怖がよくなるというルールは、患者にとって確率の高い結果を記述したルールとなり、従いやすくなったと推察される。効果を教示されたのちにERPをすることはルール支配行動だが、できたときに、生活が楽になるまたはうれしいと直ちに感じられるホームワークを設定することにより、ERPをすることが行動内在的強化随伴性を有することが期待できるようにもした。このような工夫により、本来苦痛を伴う治療法であるERPを容易に導入することができたためHIV感染恐怖が回復し、同疾患の影響を受けていたうつ病も回復したと推測する。

コロキウム報告
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