抄録
自らが選択決定できるということが,不安を増大したり低減するという矛盾した効果をもつと報告されている。本研究では,設定された3つの確率条件からひとつを被験者自身が選択できる群と実験者により指定される群とに分け,条件や個人特性(1-E)との適合性もあわせ,選択決定の前後の時相にみられる心拍変化を手掛りに選択可能性の検討を行うことを目的とした。結果は以下の通りであった。(1)選択ができる場合では,選択決定前の不安が高く選択後の不安が低減されるが,できない場合では逆のパターンを示し,指定後の不安が高いことがわかった。これまでの矛盾した報告は,扱っていた時相が異なっていたためであり,時系列としてみることで,選択可能性のもつ不安増大・低減効果がより明確になった。(2)条件や個人特性との適合性に関していうと,適合性がよいと不安が低減されることがわかったが,選択可能性ほどその効果は強くない。