抄録
本研究の目的はイメージをストラテジーとするHR自己制御課題において,制御成績を向上させる教示セットとして用いた,反応命題方向づけの効果を検討することであった。その際,特に(1)被験者の持つ制御への意図の有無との交互作用,(2)増加一減少両方向へのHR制御における効果,の2つに焦点をあてた。その結果,反応命題方向づけはHR制御に有効であり,被験者の意図と相乗的に作用すること,しかもそれ自体は呼吸などの身体的媒介に直接作用するものではないことが示された。この結果はこの手続きの教示セットとしての妥当性を支持するものである。しかしながら,反応命題方向づけよりもたらされる制御成績の向上は顕著なものではなく,制御方向別にその効果を確認することはできなかった。覚醒イメージと安静イメージでは反応命題方向づけの効果の及ぼし方に違いがあることが,内省報告の分析から示唆された。