行動療法研究
Online ISSN : 2424-2594
Print ISSN : 0910-6529
外傷後ストレス障害患者の症状と生活支障度に関連する要因の比較検討 : トラウマや症状に対する認知的評価、対処方略を用いた検討
伊藤 大輔中澤 佳奈子加茂 登志子氏家 由里鈴木 伸一金 吉晴
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2015 年 41 巻 1 号 p. 19-29

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抄録

本研究の目的は、PTSD症状と生活支障度の関連を検討し、認知行動的要因がそれぞれに及ぼす影響を明らかにすることであった。主にDVをきっかけに医療機関を受診した女性のPTSD患者41名を対象に、出来事チェックリスト(ECL)、PTSD症状(IES-R)、生活支障度(SDISS)、認知的評価(CARS)、PTSD症状に対する否定的解釈(NAP)、対処方略(TAC)を実施した。IES-RとSDISSに弱い相関が見られたため、階層的重回帰分析を行った結果、PTSD症状には、トラウマの脅威性の認知、症状に対する否定的予測と意味づけ、回避的思考の有意な正の影響性が見られた。一方、生活支障度には、トラウマの脅威性の認知、放棄・諦めの有意な正の影響がみられ、肯定的解釈、責任転嫁の有意な負の影響が見られた。これらのことから、DVに起因したPTSD患者には、生活支障度の改善に焦点を当てた介入を積極的に行う必要性が示唆された。

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© 2015 一般社団法人 日本認知・行動療法学会
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