行動療法研究
Online ISSN : 2424-2594
Print ISSN : 0910-6529
実践研究
疼痛性障害を呈する患者にマインドフルネスに力点を置いたアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)が奏功した一事例
杉山 風輝子岩田 彩香熊野 宏昭
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2016 年 42 巻 3 号 p. 367-377

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抄録

疼痛性障害を呈する患者に対し、マインドフルネスに力点を置いたAcceptance & Commitment Therapy(ACT)を導入したことにより、生活上の問題が大きく改善した事例を報告する。来院当初は、痛みを含む身体症状に対し、医療機関を頻回に受診するなどの援助希求を伴う回避行動をとっており、行動範囲の縮小、心配や反芻を繰り返すことによる抑うつ症状を呈していた。そこで、過去の失敗経験や未来の心配と距離をおく脱フュージョンや、自らの体験を回避せずに観察するアクセプタンスを導入したうえで、今を偏りなく観察するマインドフルネスの促進に力点を置いた。その結果、回避行動の随伴性をモニタリングし、習慣的行動をいったん停止するプロセスとしての自己および文脈としての自己の高まりや、身体症状をアクセプトしながら実生活の中で正の強化が得られやすい行動の拡大が認められ、特性不安や抑うつ感情も大幅に改善した。

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© 2016 一般社団法人日本認知・行動療法学会
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