文化人類学
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土器の生涯 : 土器片・レプリカ・触知性(<特集>芸術と人類学)
古谷 嘉章
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2008 年 73 巻 2 号 p. 221-240

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抄録

本論文は、遺跡に遺された先史土器の復興をなしとげ、土器作りの新しい伝統を創始した、時代も場所も異なる2人の土器つくり-ブラジル・アマゾンのMESTRE CARDOSO(1930-2006)とアメリカ合衆国南西部のホピ=テワのNAMPEYO(ca.1857-1942)-を取り上げ、彼らと彼らの追随者・後継者たちの土器作りについての検討を通じて、先史土器の復興という特定の角度から、土器と土器作りについて人類学的に考察する。その際に、人類学におけるAPPADURAI[APPADURAI(ed.)1986]らの研究と考古学におけるHOLTORF[2002]らの研究を手がかりに、「モノの生涯」と「物質の生涯」という概念を導入し、「土器の生涯」という視座を設定する。そのうえで、出土した先史土器との関係のなかで新たに土器が作られる過程に着目して、アマゾンとプエブロの先史土器復興について民族誌的記述を提示したのちに、「土器片」「レプリカ」「触知性」という3つの角度から試掘溝を入れる。そこでは、完形性と断片性、レプリカと創造性、芸術および土器作りにおける視覚と手触りなどについての検討を通じて、土器というモノ作りを浮彫りにするとともに、「芸術」という近代的な概念を裏側から浮かび上がらせることを試みる。

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2008 日本文化人類学会
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