2024 年 4 巻 1 号 p. 62-69
【目的】コロナ禍を契機に歩行困難となった,両膝全人工膝関節置換術,高血圧,糖尿病,心不全による多疾患併存の高齢肥満症例を経験した.短時間滞在型の通所リハビリテーション(短時間リハ)で,積極的なサービスを提供した結果,単独での外出獲得に至ったため報告を行う.【症例】70代後半の女性.コロナ禍で外出機会が減少し,歩行困難が出現,転倒を繰り返したために短時間リハに通所となる.動作時息切れが顕著で,一本杖歩行は 3 m程度で疲労を訴えた.【治療介入】週2日,1回2時間で,6ヶ月間介入した.セラピストは各セッションで約20分間の個別対応を提供した.歩行獲得を目的として,減量,運動耐容能の向上,下肢筋力の増強,歩行練習,患者教育を提供した.【結果】6.7 kgの減量に成功し,屋内独歩を獲得,205 mまで歩行距離が延長し,一本杖で外出可能となった.【結論】利用者の個別性に合わせた短時間リハの介入は,複数の慢性疾患を有する予備能力の低い高齢者に対して,安全にADLの拡大に寄与することを示した.