2025 年 5 巻 1 号 p. 60-68
著者らは,美容院が有する地域在住高齢者と社会とのつながりについて研究を継続している.この調査を通じて,群馬県美容業生活衛生同業組合との顔の見える関係が構築され,2023年11月に同組合からの依頼を受けて美容師を対象とした講演を2回実施した.講演では,日本の高齢化の現状や高齢者の身体的・心理的特徴,理学療法士の専門性と美容師との共通点に言及しつつ,美容院が高齢者の社会参加や生活の質(QOL)向上に寄与する可能性について伝えた.講演後に質問紙調査を行い,聴講者91名のうち90%以上が内容への高い理解度・関心・今後の実践意欲を示した.自由記載では,「美容師の役割の大切さを感じた」「高齢顧客への対応に関する講習があるとよい」など前向きな意見が多数寄せられた.本報告は,理学療法士が他職種と協働し,高齢者支援を地域に広げる新たな実践例であり,同様の取り組みを実践する際の一助となることが期待される.