2022 年 50 巻 3 号 p. 85-91
症例は80歳の男性で症候性右頭蓋内内頸動脈狭窄症である。右大腿動脈穿刺にて右頭蓋内内頸動脈に対する経皮的血管形成術を施行した。カテーテル抜去前の大腿動脈撮影で総大腿動脈は大腿骨頭中心レベルで分岐部しており,末梢の浅大腿動脈が穿刺されていた。止血デバイス設置後に圧迫を継続したが2日後に穿刺部の圧痛が生じ,エコー検査にて穿刺部直下に26 mmの仮性動脈瘤を認めた。エコーガイド下の圧迫で瘤の消失を確認したが術後4日目の下肢CTアンギオグラフィーで再発を認め,術後6日目に外科的に血管を修復した。大腿動脈の高位分岐は稀であり,仮性動脈瘤のハイリスク因子になり得る。仮性動脈瘤のリスク因子を理解したうえで発生を防ぐには,総大腿動脈本幹に穿刺することが理想的である。そのために,透視下に大腿骨頭中心から上縁の間を穿刺することと大腿動脈撮影による穿刺部の確認が重要である。浅大腿動脈と大腿深動脈は並走しており,触知による識別は困難であるため,万一仮性動脈瘤が発生してしまった場合はエコーを用いて圧迫部位を決定すべきである。