2025 年 60 巻 1 号 p. 56-63
【目的】脂肪肝は内臓脂肪蓄積の肝臓における表現型とされており、過量飲酒は脂肪肝のリスク因子であることが知られている。Fatty liver index (FLI) は脂肪肝の予測能に優れ、特定健診の測定項目のみで算出可能であるため健診での活用が期待される。本研究では、地域住民における飲酒習慣およびインスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRとFLI高値との関連について検討した。
【方法】循環器疾患の既往がなく生活習慣病の治療を受けていない40~74歳の男女を対象とした神戸研究のベースライン調査参加者1,078名のデータを用いた横断研究である。飲酒習慣は現在飲酒の有無と1日飲酒量に基づき、男性を4群 (なし、1合未満/日、1-2合/日、2合以上/日)、女性を3群 (なし、1合未満/日、1合以上/日) に分類し、脂肪肝の存在が疑われるFLI 30以上をFLI高値と定義した。飲酒習慣・HOMA-IRとFLI高値との関連は多変量ロジスティック回帰分析により検討し、オッズ比と95%信頼区間を算出した。
【結果】全解析対象者1,078名 (男性323名、女性755名、平均年齢58.9歳) のうち、FLI高値を認める者は172名 (16.0%) であった。飲酒習慣とFLIとの関連において、男性では1-2合/日および≧2合/日の群でFLI高値と有意な正の関連を認め、女性では1合以上/日の群でFLI高値と有意な正の関連を認めた。また、HOMA-IRは男女ともにFLI高値と有意な正の関連を認めた。非肥満者に限定した解析でも同様の結果となった。
【結論】非肥満者を中心とした地域住民において、1合以上/日の現在飲酒は男女ともFLI高値と有意な正の関連を認めた。非肥満者であっても日常的な飲酒量が多い者では脂肪肝に伴うインスリン抵抗性の増大が循環器疾患の発症につながる可能性があるため、減酒を推奨することが望ましい。また、FLIは非肥満者でもインスリン抵抗性を反映していることが示唆された。