抄録
日本の生活環境は近年西欧化しており, 臨床的には虚血性心疾患 (IHD) が増加しているといわれている。しかし, 死亡統計ではIHDの増加は認められないため, 増加か減少かは明らかではない。IHDの動向を把握することは, 今後の予防対策上重要である。IHDによる死亡が正しく死亡統計に示されているか否かを検討するため, 大分市における25~74歳の心疾患による死亡者について, 医療記録を調査し, 死亡診断を検討した。心疾患死亡全体の中で, 調査の結果急性心筋梗塞に分類されたものは21%であり, 死亡診断におけるIHDの35%より少なかった。一方, 調査結果により急性死と分類されたものが, 心疾患全体の31%を占めた。この急性死の2分の1をIHDとして推定した結果, IHDによる死亡と分類されたものの数は, 死亡診断のIHD数を若干上回ったが, 両者に大きな差異は認めなかった。すなわち, IHDの死亡統計はほぼ実態を示しているものと考えられた。