日本循環器病予防学会誌
Print ISSN : 1346-6267
循環器疾患予防のための栄養素・非栄養素成分に関する疫学研究の最近の動向 : 系統的レビュー
佐々木 敏
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 38 巻 2 号 p. 105-117

詳細
抄録

ヒトを対象として栄養素・非栄養素成分と循環器疾患との関連を検討した研究における最近10年間の動向について、心筋梗塞と脳卒中の発症または死亡をエンドポイントとしたコホート研究と、血圧値と血清 (血漿) コレステロール値の変化を評価指標とした介入研究を対象に、系統的レビューを行った。後者についてはメタ・アナリシスと系統的レビューのみを収集対象とした。1993年から2001年のあいだに学術誌に掲載された原著論文についてPubMedを用いて系統的に収集した。検討された論文数はコホート研究では心筋梗塞・脳卒中がそれぞれ76件および36件であり、介入研究では血圧と血清 (血漿) コレステロールに関する報告がそれぞれ8件および14件であった。コホート研究では、 (1) 栄養素を量として把握した研究が大半を占めること、 (2) 抗酸化栄養素・ホモシステイン関連栄養素に関する研究の増加、 (3) 機能を詳細に限定した栄養素を扱った研究の増加、 (4) 妥当性の検討がなされた調査法の使川、エネルギハ調整済み摂取量の利用など高度な栄養疫学的調査・解析技術を用いた研究が大半を占めていること、があげられた。介入研究では、 (1) ランダム化割付比較試験 (randomized controlled trial : RCT) が数多く実施されていること、 (2) 動物研究で示唆された栄養素・非栄養素成分の効果を介入研究で検討する試みも数多く行われていること、 (3) ほぼ確立したと考えられる栄養素に関しては、利用面における可能性や問題点を検討する研究に移行しつつあること、があげられた。しかしながら、日本やアジア諸国からの報告は乏しく、今後の報告が待たれる。

著者関連情報
© 社団法人 日本循環器管理研究協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top