抄録
本稿では,中東欧・旧ソ連諸国への外国直接投資が,多国籍企業との市場競争やサプライヤー=クライアント関係を通じて国内企業に及ぶ生産性波及効果に関する先行研究の実証成果を,メタ分析の手法を用いて統合・解析した.この結果,筆者らが選定した文献30点は,全体として統計的に有意に正の生産性波及効果を実証しているが,その効果サイズは,現実世界において決して著しいものではないことが判明した.加えて,この研究領域では,統計的有意性が高い実証成果に偏重する公表バイアスの疑いが大変強く,この問題の否定的な影響故に,移行経済における非ゼロの生産性波及効果の有無を判定するには至っていないことも明らかとなった.真の効果を突き止めるためには,更なる実証研究の蓄積が求められる.