本稿は,欧州新興市場20カ国及び中国に所在する総計36,815社の企業犯罪歴を明らかにすると共に,取締役会構成及び国家制度の犯罪抑止効果を実証的に分析した.これら新興市場企業の約6%に当たる2,259社は,2020年1月から2023年9月までの期間に,総計5,980件の罪を犯したことが明らかになった.これら企業犯罪は,取締役会規模がより大きい企業でより頻度が高いが,逆に,女性経営者や女性役員の存在は,その発生を抑制する.これに対して,取締役会の独立性は,顕著な犯罪抑止効果を発揮しない.一方,国家制度は,企業犯罪に対して強力な抑止力を発揮し,その効果は実に新興市場共通である.
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