聴能言語学研究
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純粋発語失行症例における発話の経時的検討
吉野 眞理子河村 満
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1993 年 10 巻 2 号 p. 110-119

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抄録
21歳,右利き,女性,左中心前回中・下部病変による純粋発語失行症例における発話を発症後3ヵ月から9年間にわたり経時的に検討した.分析資料には同一文章の音読課題を用い,国際音声字母で音声表記した上で,音節の分離・分節音の引き伸ばしの数を知覚的に分析,また音読時間を計測した.結果は以下のとおりである.(1)分節音の誤り:誤りのタイプは歪みが最も多く,文節内位置の効果は明らかでなかった.誤り数は発症後8ヵ月までにほぼ改善し,その後は大きな変化がなかった.(2)プロソディー障害:発話速度低下,音節の分離,分節音の引き伸ばしも発症後8ヵ月間は急速に改善した.その後も数年にわたり緩やかな改善が続いたが,9年後の現在でも残存している.(3)構音の障害(分節音の誤り)とプロソディー障害との対比:前者は早期に改善するのに対して後者は遷延する傾向が認められた.
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© 日本コミュニケーション障害学会
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