抄録
言語と身振りの関係を明らかにするために,初期言語発達インベントリーを19ヵ月から38ヵ月の言語獲得の遅れた子ども21名と,8ヵ月から16ヵ月のことばがないか,1語発話期の健常児176名の親に実施した.年齢を一定にした偏相関係数を算出した結果,健常児,言語獲得の遅れた子どもとも言語測度と身振りの偏相関は高かった.言語理解と言語表出で関連する身振りの領域は異なり,象徴水準の低い身振りと言語理解が関連していた.また言語獲得の遅れた子どもでは,対人的な要素を含む身振りと,初期の言語表出との偏相関が高く,言語表出がなかった子ども7名の身振りをみると,人形への身振りの出現が低かった.また7名のうち3名に代置のみたて遊びがあり,彼らは乳児期に喃語がなかったりで,発声・発語器官を司る中枢神経系に問題をもっていることが予想された.言語獲得の遅れた子どもをみていく際,身振りの側面も評価し,基底にある象徴機能の発達の水準を評価することが重要であることが提起された.