聴能言語学研究
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仮名書字を用いた軽度伝導失語の訓練
今村 恵津子
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1994 年 11 巻 1 号 p. 28-34

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抄録
5音節以上の語に音韻性錯語の頻出する軽度伝導失語1例に対し,仮名書字を媒介とした訓練を行った.材料は5音節以上の具象語の絵カードおよび漢字熟語(小学4~5年生レベル)で,ステップとして目標語のモーラ数だけ○をかき,そこに対応する仮名文字を記入し,指で1つずつ押さえながらリズムをつけて音読するという方法を取った.絵カード呼称課題において,仮名書字訓練の結果は,復唱訓練に比して有意に高い改善が得られ,かつ反応が安定した.他方,非訓練語は,低い成績にとどまった.仮名書字訓練の効果が現れた時点から漢字熟語の音読課題にも当方法を適用し,同様に改善が得られた.これは,仮名書字訓練が音の選択と配列を含む音韻処理過程に直接働きかけたことにより,音節数の多い語において音の安定がはかられたと考えられる.
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© 日本コミュニケーション障害学会
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