抄録
Dysarthriaは,運動の実行過程に関与する神経・筋系の損傷を原因とし,それによって生じた神経生理学的変化,さらにそれがもたらす運動学的な異常を背景としている.そのため,運動機能の評価は運動学的レベルから神経生理学的レベルにわたって行われる必要がある.運動学的レベルの評価では,主にどこがどの程度障害されているのかという情報が得られるのに対し,神経生理学的レベルの評価ではどのように障害されているのかという運動の質的な面の情報が得られる.神経生理学的な観点として,中枢性の姿勢コントロール機構について,また筋制御の崩れにみられる異常な筋緊張と異常な運動パターンの発現について,症例をあげて示した.運動機能の評価手段として,発声発語運動そのものをよく観察する・発声発語器官の異常な筋緊張の分布や協調性と同時に身体全体の協調性のコントロールを評価する・触診と操作をして反応をみながら評価することの有効性について述べた.