抄録
失語症例の長期経過資料に基づいて,言語機能の回復と障害の受容および社会復帰に困難を示す症例の資料から言語訓練の終了を決定するための基準を検討した.若い症例に対しては,言語症状にかかわらず積極的に強力に言語訓練を行い,言語症状が目立たなくなって学力,職業能力の増進が課題となる段階が言語訓練の終了と考えられる.中高年の失語症例では,重度では訓練効果が限られ,中度以上が積極的対象例とみなされる.当初の言語機能促進と,慢性期の機能再編成,コミュニケーション訓練が一応の成果を上げた段階が終了時期と考えられる.失語症者の情緒的問題では,適応にかかわる課題に立ち向かうための働きかけを行い,障害の受容をすすめ,言語訓練の自己目的化を回避する.関連職,機関,家族との橋渡しを行って終了に向かう.