抄録
英語圏での特異的言語障害(SLI)の中心的な言語特徴は,統語(特に文法形態素)および音韻的情報処理の面の問題に現われる.日本におけるSLIの同定方法の確立,その言語特徴の解明を目指して,5-6歳の幼児15名をSLIサスペクトとして同定し,統語関係の理解や表出ならびに疑似語(古語)復唱課題を実施した.その結果,5歳SLIサスペクトではほぼすべての課題で同年齢の統制群より成績が低かったが,6歳SLIサスペクトでは受動態や使役の表出面のみ同年齢の子どもからみて有意に遂行レベルが劣った.また,表出言語年齢をマッチさせた統制群との比較では,これらの統語や音韻同時・短期記憶課題において有意な差がみられなかった.このように幼児期における発達にともなう言語特徴の変化の可能性や,言語の統語や音韻構造の違いがSLIの言語特徴と相互作用する可能性が示唆された.