2002 年 19 巻 1 号 p. 29-34
介護保険の導入後,STが人員基準に含まれるようになったこともあり,介護老人保健施設(老健)に勤務するSTが急増している.2001年4月,我々は全国94の高齢者施設(主に老健)を対象にアンケート調査を実施し,54施設から回答を得た.老健で働くSTの悩みの背景ば、(1)制度面の立ち遅れ,(2)STとしての技法・方法論の不足,(3)STの役割の不明確さ,(4)他職種からの理解の得られにくさの4つに集約された.STとしての立場を確立していった人達のアプローチの分析から,老健におけるSTの役割は大きく3つに分けることができると考えられた.(1)生活モデルに沿った,利用者全体に関わる働きかけ,(2)狭義のコミュニケーション障害をもつ利用者への援助,(3)他職員への教育的役割.今後は老健STについてのガイドラインの作成,対象者に適した評価法の開発,STとしての技法・技術の開発,ニーズに合わせた講習会の実施など職能団体,学術団体からの支援が求められる.