聴能言語学研究
Online ISSN : 1884-7056
Print ISSN : 0912-8204
ISSN-L : 0912-8204
最重度痴呆性高齢者に残存する言語使用能力
面接における適切性の評価
加藤 直子竹内 愛子飯高 京子
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 19 巻 3 号 p. 159-165

詳細
抄録
言語使用能力には高い認知能力を伴う「情報伝達の要素」と処理が自動化された「形式的な要素」がある.一般的に最重度の痴呆には後者のほうが残存しやすいと考えられるが,この2側面の残存性を8つの場面で比較した.「情報伝達の要素」には「応答」「ジェスチャー」を,「形式的な要素」には「休止時間」「視線」の各2,計4の変数を用いた.最重度の残存性を判断するために,対象をMini-Mental State Examinationにより最重度(n=16),重度(n=14),中~軽度(n=15)の3つの群に分類した.結果,最も残存しにくかったのは「応答」で,「ジェスチャー」では挨拶時のお辞儀だけが残存した.「休止時間」は残存の傾向があり,「視線」は全場面で残存した.以上から,簡単な対話場面での最重度の痴呆性高齢者の言語使用能力は「情報伝達の要素」では他群より劣るが,「形式的な要素」は残存しやすいことが示唆された.
著者関連情報
© 日本コミュニケーション障害学会
次の記事
feedback
Top