聴能言語学研究
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高度難聴児の言語発達に関する検討
米田 真弓福田 登美子
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1985 年 2 巻 1 号 p. 63-72

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抄録
言語発達遅滞が両親により認識されていたにもかかわらず、全身的に著しい疾患がなかったため、この面に関する精密検査を怠り放置され、5歳時にはじめて難聴であることが診断された女児に対し、集中的な聴能言語訓練を施行した。訓練の過程で収集された資料について、会話文構造の発達変化を分析し検討した。早期に発見され、系統的聴能言語訓練をうけた難聴児症例より収集した同様資料を対照として用い比較検討した。分析の結果は次の通りであった。
1) 音声言語習得の臨界期を過ぎると集中的な聴能・言語訓練を行っても年齢相応の構文能力を習得できなかった。
2) 不完全文のしめる割合は加齢とともに減少したが9歳時点でも不完全文は話しことば全体のおよそ半数(50%)をしめた。
3) 不完全文の内容としては、ことばの誤用・機能語や主部の欠落などが多く見られた。機能語の習得、接続詞、副詞の習得などは困難であった。
4) 客観的抽象的表現力の習得は困難で、早期治療例と同様の傾向を示した。
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© 日本コミュニケーション障害学会
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