聴能言語学研究
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2 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 高須賀 直人
    1985 年2 巻1 号 p. 1-18
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    自閉傾向をともなう言語発達遅滞の症例に行った訓練プログラムを報告した。症例は、初回評価時、エコラリアはあるものの、言語理解、言語表出はともに認められなかった。初期の単語学習から3語連鎖の学習に至る言語理解に重点をおいた訓練プログラムは、比較的スムーズに学習され、コミニュケーション行動もあわせ改善した。他方、症例の言語習得過程には、色名、数詞等について文字による理解を通して音声による理解が成立するなど特異な点がみられ、また、質問への応答の困難性、言語機能の未分化などいくつかの問題点も残された。これらの結果を踏まえ、訓練プログラムの課題および症例の言語習得過程の障害の特質について、若干検討した。
  • 広瀬 尚子, 飯高 京子
    1985 年2 巻1 号 p. 19-31
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    脳性まひ児は出生時より肢体不自由のため身体概念の発達が遅れているとみなされている。本研究は肢体不自由養護学校の低学年に在籍する脳性まひ児39名を対象に行った身体概念の発達に関する調査報告である。各被験児は個別に身体概念の発達、肢体不自由程度、過去の訓練歴、理解語彙年齢について検査と評価を受けた。結果の主なものは下記の通りである。
    1.脳性まひ児における身体概念の発達と語彙年齢との間には有意な相関が認められるが、生活年齢や肢体不自由程度との間には認あられなかった。
    2.脳性まひ児の中で早期(0-1歳)に訓練を受けた者は身体概念の発達が良好との傾向がみられた。
    3.本研究と同じ調査法を用いた健常児120名の調査(弓削、1980)では、身体概念は2歳から3歳にかけて急速に発達し、4歳から5歳にはほぼ確立する傾向を報告しているが、今回調査した脳性まひの場合、CA、VAのばらつきが大き過ぎて健常児群にみられた発達傾向は認められなかった。
  • 久力 周子
    1985 年2 巻1 号 p. 32-42
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    失語症が、言語訓練によってどこまで回復していくのかを探るには、長期の追跡が必要と考える。
    そこで、失語症発症後1年以上経過後に訓練を開始し、発症後3年以上になる5名(A群)と、発症後早期より3年以上訓練を継続している8名(B群)の計13名の言語症状の経時的変化を、SLTAの総得点、及び、モダリティ別得点により考察した。
    1.訓練開始12ヵ月間は、発症後の経過月数の長短にかかわらず、A群、B群ともに顕著な改善がみられた。
    2.B群は、訓練開始12ヵ月を過ぎると、6~12ヵ月程の停滞期の後、再び明らかな改善が現われそのまま継続された。
    以上の点から、失語症発症後の経過月数にかかわりなく訓練を行うことの必要性と、発症後早期より、少なくとも3ヵ年間は、訓練を継続することの有効性が示唆された。
  • 早田 裕子, 野島 啓子, 藤田 郁代
    1985 年2 巻1 号 p. 43-52
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    Broca失語症者、Wernicke失語症者各15名、非脳損傷成人10名を対象に、記銘力と構文理解力の関係を分析した。課題は、物品名の聴覚的記銘と構文理解力テストであった。後者は2つのテストから成る。一つは課題文の文法溝造を統制し文節数を変え、処理できる情報の量を調べた。他方では、課題文の文節数を統制し文法溝造の難易を変え、処理できる情報の質を調べた。実験により次のような結果が得られた。
    (1) 両失語群の言語記銘力は、対照群に比べ有意に低かった。
    (2) 両失語群とも、言語記銘力のより高い者の方が、文節数のより多い文型まで理解できた。
    (3) 両失語群とも、言語記銘力と処理できた文法構造の難易の間に関係は存在しなかった。
    以上より、言語記銘力の高さは、文を理解する際、文の持つ情報の量的処理には有利に働くが、質的処理には影響を持たないことがわかった。
  • 一症例の検討
    田上 恵美子
    1985 年2 巻1 号 p. 53-62
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    脳の器質的病変により発現する言語障害に失語症とマヒ性構音障害があるが、これらと若干異なるものにDarleyらが提唱したapraxia of speechがある。今回ほぼapraxia of speechのみを有すると考えられる症例に接し、評価、訓練、患者自身の病察を聞く機会を得た。
    症例:51才、男性、右利き、脳血栓、右手III・IV・V指に軽度マヒ。発症初期は失語症(-)、マヒ性構音障害(-)、その他の巣症状等(-)、WAIS言語IQ107(筆記)、動作IQ112である。この状態にもかかわらず意図的な発話は、ほとんど不可能であった。その後、DarleyらのプログラムやMITを参考に系統的訓練を施行し、発症後約4ヶ月でプロソディ障害が残存する発話となった。
    本症例の特徴である、構音に限った問題、非一貫的な音の置換、標音文字操作へのごくわずかな影響、プロソディ障害、探索行動等は、Darleyらの述べるapraxia of speechの特徴とほぼ一致するものであった。
  • 米田 真弓, 福田 登美子
    1985 年2 巻1 号 p. 63-72
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    言語発達遅滞が両親により認識されていたにもかかわらず、全身的に著しい疾患がなかったため、この面に関する精密検査を怠り放置され、5歳時にはじめて難聴であることが診断された女児に対し、集中的な聴能言語訓練を施行した。訓練の過程で収集された資料について、会話文構造の発達変化を分析し検討した。早期に発見され、系統的聴能言語訓練をうけた難聴児症例より収集した同様資料を対照として用い比較検討した。分析の結果は次の通りであった。
    1) 音声言語習得の臨界期を過ぎると集中的な聴能・言語訓練を行っても年齢相応の構文能力を習得できなかった。
    2) 不完全文のしめる割合は加齢とともに減少したが9歳時点でも不完全文は話しことば全体のおよそ半数(50%)をしめた。
    3) 不完全文の内容としては、ことばの誤用・機能語や主部の欠落などが多く見られた。機能語の習得、接続詞、副詞の習得などは困難であった。
    4) 客観的抽象的表現力の習得は困難で、早期治療例と同様の傾向を示した。
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