聴能言語学研究
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失語症者のメタファー能力
身体部位を中心として
今村 恵津子
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1986 年 3 巻 2 号 p. 17-25

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抄録
メタファーは,既にあることばでもって新しい概念を表現し,意味を拡張していく性質をもっている.本研究では,失語症者30名(流暢型,非流暢型各15名),健常成人10名を対象に身体部位の名称(目,手,口,足)を他の対象物の一部に転用する能力を調べた.方法は,基礎課題として身体部位の運用を,転用課題として対象物の一部を赤く色づけした絵カード17枚を用いメタファーの表出と理解を,類推課題として正立,横転,倒立した木の絵に身体部位を対応づける類推能力を調べた.
その結果,失語症者は,身体語彙の運用ができても,それらを対象物の一部に転用することに障害が見出された.木に対する身体部位の対応づけでは,互いの位置関係が必ずしも正確には描かれなかった.流暢群の反応の中には,意味部門の障害を示唆するものが見られた.今後,失語症の語彙訓練の一部として,語を転用して意味を広げていく側面の開発が望まれる.
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© 日本コミュニケーション障害学会
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