抄録
愛知学院大学歯学部附属病院口腔外科において,口蓋裂の初回手術を2歳時までにおこなった症例の,術後の3歳時における鼻咽腔閉鎖機能,構音とそれを評価する基準の違いについて,昭和50年度と60年度の場合で比較,分析した.対象は両側唇顎口蓋裂14例,片側唇顎口蓋裂50例,口蓋裂32例で,50年度37例,60年度59例の計96例である.手術は複数の術者により,palatal push backとpalatal pull upward法が施行された.調査方法は,はじめに両年度に録音された構音サンプルを現在の判定法に基づいて再評価した.つぎに,50年度当時と現在の判定法,その後の治療方針の違いを,当時のカルテの記載事項を参考にし比較した.その結果10年前と現在とでは,鼻咽腔閉鎖機能,異常構音の有無と種類別発現頻度に有意な差は認められなかった.しかし口蓋化構音においてはその評価基準に違いがみられた症例があり,これは口蓋化構音に対する判定者の認識の深まりが一因と考えられた.