聴能言語学研究
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口蓋裂治療の歴史と展望
加藤 正子
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1989 年 6 巻 2 号 p. 50-57

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抄録
口蓋裂の手術史をみると,単に裂を閉鎖する時代から言語機能を考えて手術を行う時代へと変わり,現在は良好な言語と顎発育を考えた手術法の開発へと変遷してきた.口蓋裂に伴う問題は哺乳,摂食,言語,聴力,顎発育,容貌,遺伝,合併障害などにみられ,治療は長期にわたる.その上これらの問題は2次的に患者に心理的,社会的不適応を起こす原因となりやすい.
従って,単独の専門家で全ての問題を解決することは不可能であり,治療は必然的にチームアプローチによるものへと変遷した.しかしながら,現在の日本の医療体制においてチーム治療を行うことはおのずと限界がある.誕生時から成人までケアができ,手術をはじめ一貫した治療,相談が受けられる口唇裂口蓋裂治療センターのような治療機関の設立が各地域に望まれる.そのためには今後,口蓋裂治療に携わるスタッフは自らの診療内容を高めるとともに,患者のニードを中心とした開かれた診療体制の実現のために努めることを考えなければならない.
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© 日本コミュニケーション障害学会
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