抄録
自閉児に見られる種々の行動が環境との相互作用の結果であるという観点より,自閉児の言語習得と環境(そもそも指導室内での働きかけも改変された環境の提供に他ならない)との関連について,環境因が行動に多大な影響を与えたと解釈される症例の報告を端緒に,検討を行った.検討の中心は以下の通りである.
(1) 自閉児に見られる種々の行動には社会的,発達的意味がある.
(2) 物をも含めた社会化の歪みとして対人関係の歪みが自閉児にはある.物と人との関係は対立的ではなく,相補的である.
こうした観点から,STのなすことへの示唆として,対象児といかにコミュニケーションをもつのか,対象児の環境への積極性の確保,強すぎる刺激への配慮,コミュニケーションの安定性,コミュニケーションへの構えについて,言及した.