聴能言語学研究
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舌・口底切除症例に対する舌接触補助床の有効性:舌接触部位別および構音様式別明瞭度の変化について
今井 智子山下 夕香里
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1992 年 9 巻 1 号 p. 1-9

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抄録
舌・口底切除後の構音障害に対して,舌接触補助床(palatal augmentation prosthesis,以下PAP)を装着した12症例のPAP装着前後の言語所見を発語明瞭度検査を用いて評価し,その有効性を検討したところ,以下の結果を得た.PAP装着後の舌音79音の発語明瞭度は平均14.8%の改善で,このうち10%以上の明らかな改善は12例中9例に認められた.舌接触部位別では明らかな改善は舌尖音,舌背音において多く,舌後方音では少なく,また,構音様式別では摩擦音,破擦音,通鼻音および弾き音で多く,破裂音では少ない結果であった.また,問診によるPAPに対する満足度と明瞭度との関連では,明瞭度の改善と主観評価が必ずしも一致しない症例も認められ,発語明瞭度の改善だけではなく,明瞭度に反映しにくい発話速度や共鳴などの改善にも有効であることが示唆された.
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