コミュニケーション障害学
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ダウン症児者の構文表出能力
構文検査(斉藤私案)と状況絵を用いて
斉藤 佐和子
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2003 年 20 巻 1 号 p. 8-15

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抄録
ダウン症児者は言語表出に特異な障害をもつと述べる先行研究が多い.しかし,わが国の構文発達についての研究はわずかである.本研究では独自に開発した構文検査と,状況絵の説明によって文を表出させる方法を用いて,ダウン症児者の構文表出能力を検討した.対象は11歳4ヵ月~19歳10ヵ月のダウン症児者20名で,6種の格助詞,2種の態,表出の長さ,文法形態素出現比率について検査した.その結果,ダウン症児者は格助詞,態とも同精神年齢に該当する健常児より習得が遅れ,格助詞の誤りが多かった.表出の長さはMA6歳前半以前では健常児と同等であった.文法形態素出現比率はMA5歳後半以降,健常児と同値で,各自立語に1文法形態素を付加していた.これらの結果から,ダウン症児者は文法形態素を自立語に付加して表出しているものの,個々の文法形態素の習得が遅れ,習得しても不適切に使用する傾向があることが示唆された.
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© 日本コミュニケーション障害学会
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