抄録
外科的矯正治療を必要とする反対咬合患者を対象に,外科的矯正治療後の構音障害の経過と構音訓練の必要性,有効性について検討を行った.術前には,反対咬合のみの症例では,反対咬合の程度が重い症例に歯間音が多く発症していたが,反対咬合のみの症例よりも反対咬合と開咬をあわせもつ症例がoverjetの値に関わらず,歯間音が多く発症する傾向がみられた.術後は,構音訓練による構音の改善が60%の症例に認められた.このことは,咬合の改善の得られた術後にあってもなお歯間音は存在すること,そしてその習慣化された歯間音は構音訓練によって改善が得られることがわかった.歯間音は,改善された咬合の状態を後戻りさせる舌の動きでもあることから考えると,構音訓練の意義は大きいといえる.