コミュニケーション障害学
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〈STとして何ができるか、何をすべきか〉重度失語症患者の長期訓練経過:意味ヒントを用いた動作絵の発話課題
安田 菜穂
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2007 年 24 巻 1 号 p. 36-40

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抄録

重度失語症患者6例に,意味ヒントを用いた文発話課題を中心とした訓練を長期間施行し,その効果と会話的なやりとりの中で意味ヒントを用いる方法が使用可能かを検討した.対象の平均年齢は57.0歳で,本課題開始時には発症から9ヵ月以上経過していた.発話課題では,(1)聴覚的刺激,文字刺激を与え,絵を指示,(2)名詞句ヒントを言って,動詞句を言わせる,(3)動詞を含むヒントを言って,名詞を言わせる,(4)音読,(5)発話の手順に従った.1年2ヵ月以上(平均63ヵ月)の長期訓練を施行後,訓練後期には課題文の発話が可能になった.本課題終了時のSLTA総合得点率は,32~61%(平均47%,開始時平均19%)に改善した.また,会話的なやりとりでは,指示や描画による応答から,発話や意味ヒントを用いた発話へと変化した.重度失語症患者に対する長期訓練の有効性,訓練で獲得したコミュニケーション方法を会話へと般化できる可能性が示唆された.

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