犯罪心理学研究
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原著
レイプ神話と性犯罪
大淵 憲一石毛 博山入端 津由井上 和子
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1985 年 23 巻 2 号 p. 1-12

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抄録

レイプを合理化する誤った信念をレイプ神話と呼ぶが,本稿では特に,被害者である女性の側の条件を強調した4種類のレイプ神話を取り上げ,質問紙によってその測定を試みた。取り上げられたレイプ神話は,女性の暴力的性の容認,女性の潜在的被強姦願望,女性のスキ,それに女性による強姦のねつ造,である。まず研究1において,大学生男女の比較を行なったところ,レイプ神話が予想通り女性より男性によって強く支持され,これが女性の性行動に関する誤った見解に基づくことを示した。研究2では,性犯罪者にこの質問紙を施行して性犯罪とレイプ神話の関係を検討した。その結果,性犯罪者は,一般犯罪者や大学生に比べて,女性が被強姦願望を持っていると信ずる傾向が強かった。この結果の解釈としては次の3点が提起された。(1)レイプ神話がレイピストの女性に対する支配欲求を喚起して,レイプを動機づける;(2)多くの男性においては,女性への暴力に対しては内的抑制が働いているが,レイプ神話はその抑制を中和して,女性に対する暴力を実行させやすくする;(3)犯行時において,被害女性が性的強制を受け入れてくれるものと,レイピストに誤った知覚をさせる。

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© 1985 日本犯罪心理学会
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