犯罪心理学研究
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B級男子釈放者の予後調査(1)―再犯に及ぼす個人的,社会経済的要因について―
小澤 禧一
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1994 年 32 巻 1 号 p. 37-50

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抄録

経済的好況の1968年から不況に入る73年の間に同一施設を出所した3群の男子B級受刑者,総数2,553人に釈放後5年の時点での追跡調査を行った.

調査項目は,再入率,再入期間,釈放時年齢,入所度数,刑期,主要罪名,累進級,懲罰歴,携有金額および帰住先の10項目である.

釈放後5年間の再入率は,好況時に出所した第I・II群では53%であったが,不況へ向かって出所した第III群では59%と高率で,特に,仮釈放者は,前者のそれに比べて再入率が高かった.概して,20歳代の釈放者の再入率は高かったが,50歳以上の釈放者の再入率が高いとは言えなかった.入所度数が多くなる者ほど再入率は概して増加している.刑期と再入率との間に有意の関係はなかったが,これは本対象者が刑期8年未満の受刑者によるものと考えられる.主要罪名が窃盗,詐欺・横領だった釈放者や頻回入所者は,不況時には再入率が増加するが,人身犯では,社会経済的影響と再入率との間に有意の関係は認められなかった.釈放時累進級4級者や懲罰歴のある者の再入率が高かった.しかし,懲罰歴のない者や上級者が再入率が低いとも言えなかった.釈放時の所持金額の多寡と再入率との間に有意の関係なく,むしろ帰住先を親族,特に,配偶者のもとへの帰住者は再入率が低かった.この統計調査の結果については,次回の考察で述べる.

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© 1994 日本犯罪心理学会
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